ついにデビューしたドラフト1位ルーキー・立石正広の効果が大きく発揮されたゲームだったと感じる。立石の打席を、笑顔を浮かべながらも食い入るように見つめていた森下翔太。その様子がこの日を象徴する光景だったと思う。

「6番左翼・立石」は開幕前の構想だったはず。それが立石の度重なる故障などもあり、42試合目のこの日まで実現しなかった。故障を治し、ファームで実績を積んで、ようやくこの日。1年に一度の倉敷でのゲームでデビューとなったのである。

そうは言っても立石が何をしたかを振り返れば、正直、すさまじい活躍というワケではない。先頭で打席に入った2回にプロ初安打こそマークしたものの、あとの3打席は走者を置きながら凡退している。

だが彼のスタメン加入で燃えたのがクリーンアップの面々だった。12号2ランの佐藤輝明はもちろん、不振だった森下翔太が復活の2安打。さらに大山悠輔も2安打だ。3人そろってマルチ安打は今季初めてではないが、ルーキーのデビュー日にそうなったのは決して偶然ではないと感じる。

「前とうしろを打つかわいい後輩たちが頑張っていたので、先輩として負けないように頑張りました」。お立ち台で話した大山の言葉が、まさにそれを示していると思うのだ。

使える1人が加われば全体が上昇する。「打線」とはよく言ったもので主力が1人抜ければ、それ以上に力が落ちるもの。近本光司が抜けたいま、チームはそれを感じているはず。ここで立石が加入し、活躍すれば森下、佐藤らのパワーアップも見込める。この試合はそれを感じさせた。

そんな効果を狙ったような指揮官・藤川球児の“演出”だったかもしれぬ。起用、戦術を含め、内情を外に出すのを避ける球児が岡山への移動日となった18日、立石の起用を明言していた。岡山出身・岡城快生のご当地スタメンを含め、この試合に焦点を絞らせたのだ。指揮官の演出、それに応えた選手たちの働きが好投手・金丸夢斗から5回までに10安打という結果につながった気はする。

「立石を交ぜるためではなくて、彼のタイミングがあったので。どう言えばいいか、なかなかむずかしい」。勝利後の球児は、また秘密主義? な感じに戻った。この効果が続くかどうかは今後のことだが、まずは演出成功だと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 2回裏阪神無死、プロ初安打を放った立石正広はガッツポーズをする(撮影・上田博志)
阪神対中日 2回裏阪神無死、プロ初安打を放った立石正広はガッツポーズをする(撮影・上田博志)