暑い甲子園で熱い試合だ。才木浩人も、岩崎優も、巨人マルティネスもみんな失点した。両軍、死力を尽くした試合の軍配は巨人に上がったのである。「これは最後までもつれることを示したゲームよ」。テレビ解説を務めた岡田彰布(オーナー付顧問)が言う通りかもしれない。
そんな試合の中で少しだけ「これはどうなのか」と思う場面があった。阪神が1点リードの6回1死一、二塁。中押しチャンスのところだ。ここで7番・高寺望夢の打球は右翼へ飛ぶ。抜けるか外野の頭を越えるか。それとも捕られるか。
ベンチも虎党も見守ったその打球に巨人の右翼手・笹原操希が追いつき、ギリギリでアウトに。その瞬間だ。二走だった大山悠輔はスタートを切っていたため、あわてて帰塁。当然、タッチアップで三進はできなかったのである。
「あの走塁ね…。あそこは打球判断の部分なんで。ちょっと難しい。やり方はあるんだろうけど。何とも言えない」。外野守備兼走塁チーフコーチ・筒井壮は言葉を濁した。ひたむきにプレーする中心選手の動きだっただけに敗戦となれば指摘するのは難しかっただろう。
確かに高寺の当たりはよかった。思わず、飛び出してしまう気持ちは理解できる。それでも抜けるか、あるいは外野の頭を越えるか。その瞬間を見てからスタートしても生還できそうな当たりには見えた。
勝負に「たられば」はない。それを承知で言うが、直後に8番捕手でスタメンマスク、懸命に才木をリードする梅野隆太郎がバットを折りながら遊撃内野安打を放った。三進していれば2点目。試合展開もまた変わっていたかもしれない。
敵失による棚ぼたの1点だけでは勝てないかも…。そう思いながら試合が進み、これは勝てるかと思った途端、ダルベックの1発が出た。ヒザに手をつく才木の様子は疲労困憊(こんぱい)という感じだ。これは責められない。マツダスタジアムで先週、130球を投げた。「それに比べれば…」と話していたが、ほとんど変わらない中での熱投だったのだ。
「もう少し、タイガースとして束になってかかっていくという攻撃が必要になってくると思いますね。また明日からチーム一つになっていきたいですね」。指揮官・藤川球児はそう話した。走攻守、すべての部分においてベンチ一丸で向かっていくときだろう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




