しびれる1-0勝利の1点について指揮官・藤川球児は「自分たちでどうにかこうにかしてもぎ取った1点」と表現した。揚げ足を取るつもりはないけれど、少し違うような気はする。
エースが完封、4番が本塁打をマークしての勝利だ。起用している選手が働いた白星なので広義の意味では「もぎ取った1点」というのも間違いではないのかもしれないが、正直、イメージは違う。これはチームが誇るタレントが自分の仕事をした勝利だ。
注目している数字がある。盗塁数だ。今季、阪神のチーム盗塁数は「45」。これはリーグ4位である。最多はともに首位の巨人、最少は最下位・中日だ。優勝した昨季、阪神のチーム盗塁数は「100」でリーグ・トップだった。
その前年、前監督・岡田彰布(オーナー付顧問)の2年目24年は「41」。これは下から数えて2番目だ。さらに23年、日本一に輝いたシーズンは「79」でこれは同トップである。
近年に限れば盗塁の多いシーズン、そうでない年を1年置きに繰り返していることになる。これだけ見れば、強いシーズンは盗塁数も多いという見方はできるかもしれない。今季はなぜあまり走らないのか。
「そこは作戦面の話なんでね…。まあ、盗塁数を含めた攻撃面すべての成績で先頭をいかないとダメってことはないと思いますよ。今のウチの形を見てください」。先日、外野守備走塁コーチの筒井壮と話したときに、出た言葉である。
1、2番が出て、リーグに誇るクリーンアップで返す。そういう戦いが現状、阪神のスタイルということだろう。リスクをおかして盗塁するより、しっかり打って出た方がいいということかもしれない。もちろん、盗塁数そのものが少ないのは近本光司が長く不在だったことが影響しているのは間違いないのだが。
その意味で8回の攻撃には注目した。1死一塁から打者・高寺望夢と代走に出ていた熊谷敬宥との間でランエンドヒットを狙う。しかし高寺が見逃し、熊谷は二塁で刺された。最少リードだっただけに決まっていれば…と思ったのである。
球児も言うことだが主軸頼みでは、やはり、簡単には勝てない。特に甲子園では。だからこそ、もっと“仕掛けていく野球”が必要になるのではないか。巨人とデッドヒートが続くであろう後半戦。そんな姿を見たい気はする。(敬称略)




