そら、3番・森下翔太が1発打って、4番・佐藤輝明が2発打ったら勝ちまっせ。そんな試合ではあった。おまけに先発は高橋遥人。これでどうやって負けるんよという感じだ。ライバル巨人に敵地で連勝し、今季最多の貯金「13」。がっちり首位固めだ。
それでも見落とせないのは1回の攻撃だろう。1死一、二塁から佐藤がシフトの逆をついたような形で左前打を放つ。これで二走・中野拓夢は悠々、生還。問題はその後だ。
左翼・笹原操希が深い位置からカットマンに返さず、直接、バックホーム。これで打者走者・佐藤は二塁へ走った。しかし捕手を経由してボールが戻り、一、二塁間に挟まれる形に。
そのときだ。先に一走から三塁に到達していた森下翔太が動く。いかにもホームへ走るぞ…というフェイントをかけ、内野陣をかく乱。結果、佐藤は一塁へ戻ることができた。これで1死一、三塁に。その後、大山悠輔に犠飛が出て、この回、2点を先制したのだ。
結論から言えば、やはり、これは巨人の守備陣がうまくなかったように思う。一塁のダルベックが挟殺プレーで二塁へ送球した後、一塁がガラ空きになってしまった部分が大きい。連係が取れていなかったということだろう。
それでも「ほほう」と思ったのは森下、そして三塁コーチ田中秀太の動きだ。佐藤を見ながらホーム方向へ動き、また戻る。それと同じ動きをうしろで田中がしていたのだ。まるでダンスのようだった。もちろんキャンプから練習している動きではある。
それでも実戦で、しかも首位を争うこの場面でそれを見るとなんだか迫力があった。選手にしてもそうだろう。その証拠に佐藤が一塁でセーフになった瞬間、森下が右手で激しくガッツポーズをつくり、ほえたのである。本塁打を放ったときでも見せないような表情だった。
「そんなのキャンプから…。いや、何もいうことないよ」。そう笑った田中に代わり、話したのは外野守備走塁コーチの筒井壮だ。「うまく連動できたということでしょう。技術的なことであまり言えないけど勝負に対する執念がしっかりしてるということかな」。
打つだけではない。ときにはミスも出るが主軸打者2人が塁上でこんな動きができる。その技術、メンタル。阪神が、いま、この位置にいる理由だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




