第90回記念選抜高校野球大会(23日開幕、甲子園)に5年ぶり5度目出場となる聖光学院(福島)エース衛藤慎也投手(3年)のリフォームが完成した。昨秋の明治神宮大会初戦敗退後に、投球フォームを一から見直し。今冬は斎藤智也監督(54)と二人三脚で、下半身から土台を構築した。19日の練習試合で3回を完全に抑え、東筑(福岡)との開幕試合に向けて手応えを感じている。21日は、練習試合が雨天中止となり、兵庫・三木市内の室内練習場で調整した。

 衛藤のボールが捕手のミットに収まると、室内練習場のブルペンに快音が響き続けた。バッターボックスに立つ斎藤監督が思わず拍手を送るほど。衛藤は「この冬に斎藤監督とフォームを全面的に改造しましたが、良い感じだと思います。甲子園で投げさせていただければ、良い投球ができる気がしてきました」。“全面改装”でエースがたくましさを増した。

 中学までの捕手から、1年夏に肩の強さを評価されて投手に転向した。だが、昨年7月に右肘手術。初めて1番を背負って優勝した昨秋の東北大会も急造は否めなかった。明治神宮大会初戦の創成館(長崎)戦で2回途中KO。センバツまでの4カ月、“突貫工事”に着手した。

 もっとも重要視したのが“基礎工事”。足の上げ方から、打者に向かう足の着地まで。下半身の形づくりを何度も繰り返した。シャドーピッチングを繰り返し、寮では深夜まで鏡の前で、1つ1つ積み重ねた。最速141キロだった直球が130キロ超に落ちた時もあったが、下半身に合わせ、体重移動や腕が振りやすい上半身を構築した。

 「球のキレや制球も良くなった。それが自信になり、打者に向かっていく気持ちが強くなったと思う」。開幕前の最終実戦となった19日の金光大阪戦では先発して3回を完全に封じ、エースとしての信頼も確固たるものとした。左打者対策として強化していたフォークやチェンジアップもキレを増した。

 東筑には左打者が4人。兵庫・尼崎市出身の衛藤にとって甲子園のマウンドは近くて遠かった場所だ。「憧れであったけれど、今は現実的な戦う場所。兵庫と東北の代表として日本一のマウンドに立ちたい」。新フォームも気持ちも、力強く固まった。【鎌田直秀】