OB監督で33年ぶり全道切符を狙う。春季全道高校野球地区予選の抽選が24日、全10地区の先陣を切り札幌地区で行われた。今春、OBの吉田健作監督(37)が就任した札幌西は札幌平岡との対戦が決まった。14年夏に浦河を南北海道大会4強に導いた同監督の下、85年春以来の全道出場を狙う。

 札幌西・吉田監督は母校に就任後、真っ先にベンチ脇のボードに目を向けた。「全道大会で校歌」。15年秋から7季連続地区初戦敗退しているのを知っている。選手を集め「これは本気か」と尋ねた。迷わず「はい」と答えた選手たちを、一喝した。「それならまず、気持ちを100%出せ」。負け慣れた集団から感じた生ぬるさを、真っ先に指摘した。

 てこ入れのため野球ノートを始めた。「たくさん書いてくる子もいて性格が分かるし、感受性が低くないことも分かった」。おとなしい後輩の心に、熱いものがあるのを知った。中野友温主将(3年)は「自分たちから監督に話を持ちかけられるようになった」と言う。就任1カ月弱だが、心のこもった言葉のやりとりから、自主性が芽生えてきた。

 選手主体の指導にこだわる。筑波大を卒業した04年、砂川北、鵡川を計6度、甲子園に導いた佐藤茂富氏(77)が率いる鵡川で、寮舎監兼コーチを務めた。筑波大で学生コーチだった吉田監督には自負があり、気になった点をすぐ選手に伝えようとした。「頭がいいのを自慢したいなら東大に行け。困ったら必ず聞いてくる。そのときに答えられる仕掛けをつくっておけ。教えすぎるな。内面に迫れ」。恩師に鼻っ柱を折られた経験が土台になった。

 筑波大で2年後輩だった札幌南出身の田畑氏が母校監督に就任。旧制札幌一、二中ともにOB新監督でスタートする。「縁を感じるし、いい意味で切磋琢磨(せっさたくま)できたら」。羅臼、浦河と郡部校で計12年監督を務め母校に赴任。限られた条件で戦ってきた知恵を用い、後輩の意識を変えていく。【永野高輔】