大阪桐蔭(北大阪)の西谷浩一監督(48)が最高で最強のチームを作り上げた。昨夏に甲子園3回戦で敗れ、春夏連覇の夢は消えた。そこから再びチームを作り上げ、史上初となる2度目の春夏連覇を達成。自身の甲子園優勝回数も春夏合わせて7度目で、PL学園・中村順司監督を抜き、単独トップに。名実ともに、高校野球界の頂点に立った。

 西谷監督は、甲子園で新たな景色を見た。史上初となる2度目の春夏連覇。白いタオルで汗を拭った後も、その目は少し潤んでいた。「1年間の目標として、最高のチームを作ろう。そして本物のチームを作ろう。最後に最強のチームになろうと言いましたが、今日、最強のチームになったことを本当にうれしく思います」。自身の甲子園優勝回数は春夏7度目で、PL学園・中村監督を抜き、単独トップになった。

 全国から好素材が集まる。時にねたみが交じった風評にも直面する。根尾の入学に際して「近づくために、親が働く岐阜の病院に入院した」。そんな情報をネットで流された。「入院するわけないでしょ?」と苦笑する。「100回大会のために補強した」とやゆされたが、いい選手を集めれば、最高のチームができるわけではない。

 対話による「心」のチーム作りを地道に取り組んだ。昨年は福井章吾前主将と話し合い、2年生だった根尾と中川を上級生のミーティングに入れた。次のチームのリーダーに育てるためだ。昨夏、甲子園3回戦で敗退すると、翌日に全員と面談。中川の主将就任で意見は一致。西谷監督は根尾がどういう意見を持っているか、強い関心を持った。「僕はサポート役に回りたい。無責任にやるのではなく、キャプテン以上に自分は動く。副キャプテンをやらせてほしい」。このひと言で太い幹ができた。

 中村剛也に西岡剛、中田翔、藤浪晋太郎といったタイプの違う選手を型にハマらない指導で育て上げる。成績優秀な根尾という新たな個性とも出会った。「何をしてあげられたのか、と言えば、何もしてあげられてない。ただそばにいただけ。もっともっとできる子だ」。教え子に対する探究心は尽きない。西谷監督のとてつもない「包容力」が偉業を生んだ。【田口真一郎】