プロ野球広島などで捕手として活躍し、今季から尚志(福島)硬式野球部の監督に就任した松井隆昌氏(53)が11日、郡山市内の同校グラウンドで本格指導を開始した。

前日に入学式を終えた1年生11人が合流し、22人の部員とともに活動をスタート。シート打撃では自ら投手を買って出るなど精力的に動き回った。プロの世界で培った豊富な経験を伝えながら、同校初の甲子園を目指していく。

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53歳とは思えない勢いのあるボールに、バットが何度も空を切った。慣れない両耳付きヘルメットをかぶりマウンドに立った松井新監督は、体を張って選手と向かい合った。ロッテのブルペン捕手時代には特打につきあったベニーから「ピッチングマシン」、ズレータからは「ユー、グレッグ!」と呼ばれた。MLBで精密機械として知られたマダックスに例えられたコントロールは健在だった。「幸い肩はまだ元気。投げてみてわかるところもあるから」と、しっかりと選手の特徴を探っていた。

自ら1人1人に話しかけてコミュニケーションをとった。一方で集中力を欠いた小さなミスは見逃さない。「この詰めの甘さが命取りになるんだよ。そうならないために、頑張って練習するんだよ」。88年にドラフト外で福岡ダイエー(現ソフトバンク)に入団し、広島では勝負強い打撃を武器にした。中日、ロッテを渡り歩き、台湾を最後に現役引退。99年から15年までロッテのブルペン捕手を務め、侍の小久保ジャパンにも参加した。16年に福島ホープスでベンチコーチを務めた後は、3月末まで茨城で野球塾を開催し、小中学生の育成に努めてきた。

初の高校野球指導に「ブルペン捕手としての経験を前面に出しながらやっていきたい」と話す。「唯一、誰にも負けないと言えるのが、選手を乗せて、モチベーションを上げてやれるところ」と自負する。「野球は技術だけじゃなく、メンタルが大事。そこはプロも高校生も同じ」。監督就任を伝え聞いたロッテの唐川、南、大嶺らからは「松井さんならいい監督になりますよ」とメッセージをもらった。左手には、唐川が就任祝いに贈った自身のグラブがはめられていた。

高校時代は無名で、大学時代にブレークした遅咲き。ロッテ時代には小宮山悟氏(早大監督)が、引退直前まで新球シェイクの習得や、加圧式トレーニングにトライした姿を見てきた。「どこでいつ伸びるかはわからない。自分で勝手に限界を決めないでほしい」と選手の才能を信じる。

サッカーでは有名な尚志も、野球では甲子園が遠い。昨秋も地区大会初戦敗退。いばらの道は覚悟している。「やるからにはもちろん甲子園というのは目標だけど、そう簡単なもんじゃない。何年計画とかは考えず、1日たりともムダにしないで、緻密にやっていきたい」と、ゆっくりと着実に前に進む。【野上伸悟】