「全ては夏のために」。春の県大会から浦和学院(埼玉)森大監督(35)が選手たちに繰り返し伝えてきた言葉だ。
今春の県大会優勝、関東大会準優勝という結果も、指揮官にとっては夏へ向けた過程に過ぎない。「春の大会は夏の大会のデモンストレーション。夏にどう戦うかを春で経験しなければいけない」。
その言葉通り、春の県大会では55得点を記録。関東大会でも2度のコールド勝ちを収めるなど、持ち前の打撃力を発揮した。
一方で課題も見えた。県大会では22失点を喫し、関東大会決勝でも横浜(神奈川)に13失点。守備力と投手力の強化は夏へ向けた重要なテーマとなっている。
ただ、森監督は短所の改善だけを追い求めない。「短所を埋めようとして長所が消えてしまったら意味がありません」。浦和学院最大の武器は打撃力だ。その強みを維持しながら守備力、投手力を高めることを目指している。
失点を減らし、ロースコアの接戦を勝ち切る力を身につけること。そして打力という武器を失わないこと。春の戦いを理想形の90%と捉え、残る10%を埋める作業を続けている。
その背景には森監督ならではの指導哲学がある。
父の森士さん(61)も同校監督を務めた。その父の姿を、森監督は間近で見てきた。伝統を知り尽くしているからこそ、「自分の色が必要」と考える。
筑波大大学院でスポーツバイオメカニクスを学び、その後は早大大学院で心理学を研究。現在も強豪校指導者の指導行動と選手の受け取り方について研究を続けている。「同じ指導でも伸びる選手と伸びない選手がいる。選手によって理解の仕方が違う」。選手1人1人に合わせた声掛けや接し方を模索する姿勢が、現在のチームづくりにつながっている。
今年のチームは、能力の高かった前年の代を見て育ったことで劣等感を抱えていた。しかし県大会優勝を機に殻を破った。「優勝ってこんなにうれしいんだという感動を味わってほしかった」。初めて優勝の輪を作らせたのも、選手たちに成功体験を与えるためだった。
目標は明確だ。「まず埼玉を制すること。そして甲子園で校歌を歌うこと」。
監督就任5年目。まだ夏の甲子園で勝利を挙げたことはない。打力を武器にしながら守備と投手力を磨き上げる。心理学を学び、選手の心と向き合い続ける森監督の下、新生浦和学院が3年ぶりの甲子園へ挑む。【会田京叶】

