劇的勝利を決めた瞬間、慶風ナインが一斉にベンチを駆け出した。思い思いに跳びはね、何度も抱き合う。殊勲の一打を放ち、主役となった元宗竜馬主将(3年)はホームベース付近にできた歓喜の輪へ飛び込んだ。身を任せ、もうもみくちゃ。仲間の手荒い祝福を受け「もう、最高でした」。快感に浸り、大粒の汗をぬぐった。
敗戦寸前だった。1点を追う最終回2死満塁の第5打席だ。打てばヒーロー、凡打で引退の局面。「緊張ですか? ありました」。バットを握る手も、いつも以上に力が入った。2球で追い込まれ、3球目の外角低めのスライダーに反応。最後は執念で振り抜き、打球は左前で弾んだ。2人の走者が生還。崖っぷちの状況で「人生初」の逆転サヨナラ打を決めた。
負けん気の強さは人一倍だった。部員13人のうち、大半が大阪出身。築出義博監督(47)は「お祭りが大好きな子ばっかりなので」と言う。全国的に知られる岸和田だんじり祭に参加し、だんじりを引いた選手も多い。指揮官は「勢いに乗ったら止まらないです」。元宗主将も「負ける気はしなかった」。“だんじり魂”で3度のビハインドをはね返し、計4度の全国Vを誇る伝統校からの金星。押せ押せムードの勢いそのまま、一気に夏の頂点まで駆け上がっていく。【佐藤究】
◆慶風 2005年(平17)創立の通信制私立校。通信型学習スタイル、週5日登校型、スポーツ中心型などがある。生徒数は117人(女子69人)。野球部は05年創部で夏の過去最高成績は3回戦。校訓は自主・友愛・創造。所在地は和歌山県紀美野町田64。

