4点を追う2回、1死一、三塁のピンチを背負うと二松学舎大付(東東京)の市原勝人監督(61)がベンチを出た。その瞬間、マウンドの川島連十(れんと)投手(2年)は驚いたように一瞬立ち尽くした。

「自分の意志としてはまだ投げたかったけど、チームのことを考えたら、あそこで自分は降りるべきだと思った」

うつむきながら降板する左腕の夏はあまりにも短かった。準決勝の帝京戦では12安打を浴びながらも3失点完投。「3年生とまだ野球ができる」と歓喜してからわずか2日。44年ぶりの3連覇を狙う関東第一打線が容赦なく襲いかかった。「甘い球を狙われた。ピンチで余裕がなくなり、いっぱいいっぱいになってしまった」と心の弱さを責めた。

川島には、常に周囲の視線がつきまとう。父は日本ハムなどで活躍し、現在はオリックスの1軍打撃コーチを務める慶三氏(42)。兄は人気オーディション番組で脚光を浴びたSTARGLOWのRUIだ。だが、本人はそんな周囲の狂騒とは一線を画す。「決勝戦の前は父や兄から特に連絡はなかった」。父の現役時代の映像を追うこともなければ、兄の華々しい活躍に刺激を受けることもないという。「自分は自分なので。他の2人が有名になって自分の名前が上がっている部分はあるけど、そういうのは全く関係ない。自分の力でもっと上に行きたい」と言い切った。

その強い覚悟は、早くも新チームへと向けられた。「もう、こういう思いは絶対にしたくない。先輩たちには本当に申し訳ないんですが、この敗戦を糧にして、来年絶対に甲子園に行きます」。最速142キロの直球を150キロへ引き上げ、体重を79キロから85キロまで増やすという具体的な目標も口にした。「川島慶三の次男」でも「RUIの弟」でもない、川島連十としての物語が始まる。【鳥谷越直子】

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