MLBが6月21日から全投手に対して開始した粘着物質のチェックに対する騒動がさらに混迷を深めるかもしれない。ニューヨークの地元紙ニューヨーク・ポストの電子版が現地30日、一晩だけチェックが行われないことになったとスクープしたのである。

その一晩とは7月13日に開催されるミッドサマークラシック、オールスターゲームだ。記事によればリーグの情報筋が同ゲームはエキシビションゲームであるため、チェックを実施しないことを決定したと明かしたということである。

違法な粘着物質を使用すると投球の回転数が大幅に増えるとされている。そうすると速球では重力に逆らう力が強くなり、変化球では曲がりが大きくなる。これにより投手有利になり打撃成績が下がったとされ、これを問題視したMLBは粘着物質の監視を強化した後、試合中全ての投手に対し定期的なチェックを行うことをシーズン中に決定していた。

3日に行われたオーナー会議時点でMLB全体の平均打率は2割3分6厘、出塁率と長打率を足し合わせた値OPSは7割7厘だったが、それ以降29日までで打率は2割4分5厘、OPS7割3分1厘に上昇したということだ。対して投球の回転数は低下しているのだとか。

一定の効果が出ているように見えるが、ナショナルズのマックス・シャーザー投手が相手チームの要求で再検査を受けた際、帽子とグラブを放り投げ、ベルトを緩め始めるなどこの制度に抗議の意志を示している投手も多い。またパドレスのダルビッシュ有投手のようにボールが滑ることの問題を指摘する声もあり、全てが解決したとは言い難い状況だ。

オールスターゲームではア・リーグ指名打者部門で1位となっているエンゼルスの大谷翔平投手やパドレスのフェルナンド・タティス・ジュニア遊撃手、ブレーブスのロナルド・アクーニャ外野手など強打者の活躍が期待されている。投手陣も一流がそろうのは確実だ。それだけにこの一戦だけチェックが行われないことで、議論がまた沸騰しそうである。