秋山翔吾説く子供指導法、フライボール革命に警鐘も

  • 神奈川学童野球指導者セミナーで講演するレッズ秋山の右手には大きな血豆が見られた(撮影・中島郁夫)

学童野球(小学生の軟式野球)の未来を開く集まりに潜入した。「第3回 神奈川学童野球指導者セミナー -少年期のスポーツ障害を予防する-」が19日、横浜市内で開催され、神奈川県の学童野球指導者、トレーナーなど約550人が参加した。

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レッズ秋山翔吾外野手(31)が“秋山式指導法”を説いた。講師として登壇。地元・神奈川が生んだヒーローの登場に、会場が沸いた。「僕と少年野球」と題し、自身の経験から、子どもの指導法を語った。

(1)毎日コツコツと ソフトボールから始めた秋山少年。練習は1人でやることが多かった。神社で壁当てをし、自宅では素振りをした。1日100スイングがノルマ。9分割して各10回、最後に好きなところを10回。「しんどかったけど、少しずつ体力がついて、今に生きていると思います」。ポイントは、毎日やること。「100回振って『明日もか』と思ってしまうなら、5回、10回でもいい。まずは毎日やる習慣が大事。できることからやった方がいいです」と訴えた。

秋山が続けられたのは、母の存在が大きかった。「チェックシートを作ってくれました。野球だけじゃない。朝起きたら窓を開ける。顔を洗う。そんな項目の中に素振りも入っていた」。自分でやった、言われてやった、言われてもやらなかったの3段階で色分け。一番いい色のシールを貼りたい子供心をくすぐられた。「今は窓を開ける、はないですけど」と冗談交じりで懐かしんだ。

(2)自分で考えさせる オフは精力的に野球教室を開く。感じるのは「技術は上がっていても、前の年に言ったことを覚えていない。やりこんでいない。目先の映像に頼っている」子が増えたことだ。スマホ1つで最高峰の打撃映像も手に入る時代。そこに落とし穴がある。「イチローさんのまねさえすれば、うまくなるわけじゃない。自分なりの理由をつけて落とし込むことが大事。どうなりたいのか考えさせることが大事」と強調した。

自らの少年時代は「手も、足も、罵声も飛んでくる時代でした」と苦笑い。だが、その中でも考えることをやめなかった。「この選手のどこがいいと思う? と聞いてあげて下さい。自分で探すきっかけを与えて下さい」と訴えた。

(3)はやりに流されるな 近年、メジャー、さらに日本球界でも、フライの打球の方がヒットになりやすい、と言われる。フライボール革命に警鐘を鳴らした。「まだバットを振る力がない子がやっても、うまくいきません。くぎを打つのと一緒。上から打つ方が簡単です。その場のはやりに乗せ過ぎないで」。成長度合いに添った指導を求めた。

物心ついた時には、野球とバットがおもちゃだった。プロ野球選手に育てたいという父の願いだった。その父を、小6で亡くした。「僕が野球をやることが家族の絆を維持することになると、母が考えました。だったら、プロを目指そうと進路を決めました」。不屈の意志で、ここまで来た。

野球の道を突き進んだから、野球人口の減少は見逃せない。「野球をやる子が増えれば、野球界のレベルが上がる」と普遍の真理を訴えた。「まずは野球が楽しいスポーツだと知ってもらうこと。それを各選手が発信できれば。その代表として、メジャーに行きます」と使命を口にした。【古川真弥】

<海外の学童野球>

◆米国 小学生を含めた青少年対象の大きな団体が20以上あり、MLBも06年に子ども対象の野球指導アカデミーを設立し、指導を行っている。ブルージェイズなどいくつかの球団は、OBの元メジャーリーガーを指導者として起用し、年数回にわたって少年野球教室を開催。これらの取り組みにより13年から18年の間に少年野球人口は300万人増加したとの統計も出ている。

◆オーストラリア 青少年の野球を振興する団体「プレーベースボール」では、子どもたちに野球技術を集中的に教えるキャンプを開催。同国野球協会は子どもの野球人口を増やすため、どこででも手軽にできる「オージーTボール」というゲームを作り広めている。

◆韓国 06年に17だったリトルリーグチームを14年に160まで増やし、同年に米国で開催されたリトルリーグワールドシリーズで優勝。08年北京五輪の金メダル獲得や06年、09年のWBC決勝ラウンド進出で野球人気が高まり、野球人口増加と強化につながった。

◆台湾 台北にある董源小学校は国内でも屈指の野球部があり、プロ選手も多く輩出。年間ほぼ1日も休みなく練習を行うという。Uー12W杯のホストとなった台南では、リトルリーグ専用の球場を建設した際に子どもの練習施設も併設し、野球振興を行っている。