4番ゴメス、勝利を呼ばんと長打2本。オープン戦最後の沈黙がうそのように阪神主砲マウロ・ゴメス内野手(30)は今年も開幕から全開だ。8回2死。鳥谷、上本、西岡の3連打に、右翼線への鋭い2点二塁打で連結。どとうの4連打で3点ビハインドを追いついた。中日山井を打ちあぐねていた7回にも左中間への二塁打で反撃の1点を呼ぶ。この上位打線、つながると怖いのでゴメンね。
祈るゴメスに、努力を知る神様もほほ笑んだのか。3万4808人のどよめきを浴びながら、打球は右翼線を切れることなくフェアゾーンに落ちた。3連打で2点差に迫った8回2死一、三塁。4番は同点二塁打で使命を果たした。
「ああいうところに狙って打てるバッターじゃないから運の部分があったね。でも難しい球をうまく捉えられたよ」
目の前で敗戦濃厚ムードが一変していた。1番鳥谷からの3連打であと2点。「みんなでつないでいい形で来ていたから続いていきたかったんだよ」。一塁走者の西岡が本塁へ滑り込むのを見届け、二塁ベース上で豪快に3度手を合わせた。一丸を意味する新スローガン「as One(アズワン)」が体現された瞬間だった。
「打ったのはシュートだね。チョット、ボール」
スイッチの切り替えは天下一品だ。ベンチに戻ると球筋を日本語で説明する余裕があった。殊勲打の直前にはアドレナリンを抑え、タイムで打席を外す冷静さ。和田監督も「本当にランナーを置いた時の集中力はすごい」と仰天の勝負強さ。それを支えるのは卓越した暗記力にある。
異国の地では投手の名前を覚えるのが想像以上に難しかった。昨年2月の入団会見では「投手の名前? 事前にビデオは見たけれど(中日)カブレラしか分からなかったよ」と頭をかいた。そんなゴメスの講師はオマリー打撃コーチ補佐とマートン。プライベートでも日本野球を語り合った。関係者は「対戦した全員の投手を覚えているよ。少ない対戦の相手は背番号で記憶している。勉強熱心じゃないと日本では長くやれない」と目を細める。地道な準備は対策を練る中日投手陣の上を行った。
この日と同じ京セラドーム大阪でプレーしたオープン戦ラスト3試合は11打数無安打5三振。不安が渦巻いたのも、笑い話だ。昨年の開幕戦も2本の二塁打に2打点で、惨敗のチームに光を与えた。今年も同じ2二塁打の2打点。何よりうれしい勝利もついた。虎の主砲は2年目も健在だ。【松本航】



