流通経大(東京新大学)の「ちょい悪エース」、生田目(なばため)翼投手(3年=水戸工)が、最速152キロで2安打完封し、29年ぶりの決勝進出を決めた。走り込み嫌いを公言する男が、117球を投げ抜き、神奈川大(神奈川)を破った。

 どこか歯切れが悪い。生田目が、圧巻の2安打完封を決めた試合後の会見。完投した初戦の直後は「地元に帰って、のほほんと暮らしたいです。地元の市役所で公務員をやりたい」と卒業後は野球をやめる考えを明かしたが、「まだ考えてないです」とポツリ。

 「親に、自分で決めるなと言われました。あまり問題発言するなと」と苦笑いした。来秋のドラフト候補が、野球をやめる発言をした反響は大きかった。両親がプロ入りを希望する可能性も「遠回しに、そういうことかもしれません」と敏感に感じ取った。

 簡単にプロを諦めさせない。周囲が騒がしくなる力を、この日も見せつけた。最速155キロの直球は、116球目、117球目と最後の2球で152キロをマーク。「最後は三振で格好良く決めようと、思い切り投げました」と笑った。

 練習嫌いだった高校時代は、登板翌日は常に筋肉痛に悩まされた。貧弱だった右腕が、昨冬は「やらされた」と連日10キロの走り込みでスタミナアップ。相手校にやじられたら、すぐに切れていた精神面も安定し、29年ぶりの決勝に導いた。「出番があれば抑えたい」。自由奔放なトークはひとまず封印し、チームのために腕を振る。【前田祐輔】