「魔の球場」のトラウマを振り払った。阪神の守護神、呉昇桓投手(33)が意地のマウンドさばきを見せた。3点リードの9回に登板。変化球を駆使して丁寧に投げる。先頭の代打松本を外角カットボールで左飛に抑えると、乙坂も同じ球種でバットの芯を外す捕邪飛に片づけた。白崎も左飛。フライアウト3つで3者凡退。横浜での日常を取り戻した。
「球場が狭いので上げたら本塁打になりやすい。球の高さを意識して、高い球は高くする。低い球は低くするよう心掛けました」
この港町に苦い思い出があった。7月3日、2点リードの9回に登板したが、代打後藤に同点アーチを浴び、そのまま逆転サヨナラで2敗目を喫した。雪辱を期した翌4日も2点リードで登場しセーブこそ挙げたが、またも後藤に右翼へオーバーフェンスされた。悪夢以来、1カ月ぶりの横浜で登板だ。天敵後藤は故障で1軍にいない。それでも悪循環を断つべく、ひたすら右腕を振る。「打者が打ち損じてくれて良かった」。リーグトップを維持する31セーブ目を挙げた。
猛暑でも、へばらない理由がある。前日7日もこの日も外野のフェンス沿いでただ1人、ロングダッシュを繰り返した。丸太のような両足にスタミナを蓄える。勝負を制するために、やるべきことを分かっている。だから、もろく崩れない。試合後のベンチ裏。勝利を祝うハイタッチでもニコリともせず、ロッカールームに消えた。バスへの引き揚げ際「石仏」の応援ボードを掲げるファンから声援も受けた。修羅場で微動だにしないクローザーが仁王立ちする。【酒井俊作】



