選んで、走って、ノーヒットで勝ち越しだ。楽天が同点の8回に2点を奪い、ロッテに逆転勝ち。連敗を3で止め、最下位再転落を免れた。立役者は、四球を選んだウィーラーの代走で出場した森山周外野手(34)だった。勝負の二盗が敵失を誘い、一気に三塁へ。松井稼の中犠飛で本塁を踏むと、ベンチの仲間から大きな祝福で出迎えられた。

 走塁に生きる仕事人が、逆転勝ちのヒーローになった。8回無死一塁。代走で出場した楽天森山は、腹を決めていた。「それほどクイックが速くない。初球からいこうと思っていた」。ロッテ内の左足が上がった瞬間に二塁を目指した。頭から滑り込み8個目の盗塁を決めると、捕手吉田のワンバウンド送球が中前に転がる様子が視界に入った。「センターが、あそこから三塁に投げるのは難しい」。すかさず三塁を陥れ、一瞬で無死三塁のビッグチャンスをつくり出した。1死後に松井稼が中犠飛。赤土だらけのユニホームで、誇らしげに決勝の本塁を踏んだ。

 8月29日に今季2度目の登録抹消となり、8日に再度の出場登録をされたばかり。1軍復帰後初の出場機会で、いきなり結果を出してみせた。7月20日以来、約1カ月半ぶりの盗塁でもあった。「なかなかこういう展開にならなかった。ずっと走っていなかったので、いつか貢献したいと思っていた」。ワンチャンスに全てを注ぎ込んだ。

 どんな局面でも冷静にプレーできる強みがある。代走でベンチを出る直前は、自ら高村投手コーチに向かって「楽しんでいきましょう」と笑いかける余裕があった。冷静な判断による迷いのないスタートが、逆転勝ちへの好循環をつくりだした。決勝犠飛の松井稼も「ランナーが森山でしたから。彼の足なら、何とか当てれば大丈夫だと思っていた」と信頼していた。

 ノーヒットで決勝点を奪い、接戦をものにした。大久保博元監督(48)は「森山がよく走ってくれた。これをやろうとしていたんだよ。本当は打てるのが一番いいんだけどね」とスピードスターの仕事に最敬礼だった。打ち崩せなくても、得点を奪う方法はある。残り21試合。全てを注ぎ込み、最後まで戦い抜く。【松本岳志】