巨人高橋由伸新監督(40)が28日、監督としてスタートを切った。川崎市内のジャイアンツ球場での秋季練習を、スーツ姿で見守った。現役引退直後で「監督」との呼び方にまだ不慣れさを感じるが、ファンからは「ヨシノブ」と変わらぬ温かさで歓迎された。選手から監督へと立場が一変。戸惑いの残る中で迎えた初日を対話と観察にあてた新監督は、個のレベルアップを今秋のテーマに設定した。

 スタンドからの呼びかけに、思わず視線を向けた。「ヨシノブ」から「高橋監督」に立場が変わった初日。グラウンドに向かう途中、ファンから「ヨシノブ、頑張って!」と声援が飛んだ。常に「ヨシノブ」と呼ばれてきた。「監督」との呼び方には「僕も今のところ、ね」と、ぎこちなさは、まだ当然あった。慣れ親しんだ声援に、青年監督の緊張が少しほぐれた。

 選手の方にも、戸惑いがあった。練習前、高橋監督は「全ての人が強い覚悟を持って、日本一に向けて進んでいってほしい」と訓示した。選手の反応を見ると「お互いちょっと『ん?』って感じじゃないか」と気付いた。「ヨシノブさん」と、思わず声を掛ける選手もいた。「高橋監督」にまだ慣れていないと察した。

 対話から始めた。「少しずつ話すことで良い関係になれたら」と練習の合間に声を掛けて回った。亀井は「監督はいろんな方に声を掛けてコミュニケーションをとられていた。みんなで胴上げしたいと話をしていました」と力を込めた。丁寧な心遣いで、選手の見る目を「先輩」から「監督」へと切り替えていった。

 世代交代は、選手間でも行われた。来季から村田に代わり長野が選手会長を務めることが決まった。長野は「必ず優勝して胴上げしたい」と所信表明した。高橋監督は「会長が長野、主将は勇人(坂本)で引っ張ってくれれば」と、若き2人に旗振り役を期待した。

 初日は指導をせず、観察に徹した。「選手と監督とでは見え方が違うと思う」と全員を見定めるべく、育成選手の打撃練習にも足を運んだ。目を引いた選手はと聞かれても「まだ早いと思います」と優しく制した。「個の力を上げないと強いチームにはならない」と、今秋は全員をハードに鍛える方針を首脳陣で確認した。目配りと心配りに徹した初日。「少し緊張感があって、正直疲れました」と話したが、ヨシノブ監督としての第1歩はしっかり踏み出した。【浜本卓也】

<巨人監督の主な始動>

 ◆第2次長嶋監督 92年11月4日午後7時30分、秋季キャンプ地、宮崎の宿舎で1時間20分の大演説。身ぶり手ぶりを交え「優等生タイプもいいが、やんちゃ坊主も歓迎する。私も新人のとき、水原監督にこんな生ぬるい練習じゃ勝てないと怒鳴られたことがある。でも若手は失敗が許されるし、もっと我を出してほしい」と積極性歓迎を打ち出した。

 ◆第1次原監督 01年10月17日、ジャイアンツ球場での秋季練習前に決意表明。「ジャイアンツというチームで同じユニホームを着ているのだから、チーム愛という言葉を大切にしてほしい」と野球界では珍しく「愛」を強調した。

 ◆第2次原監督 05年10月16日、宮崎・アイビー球場で教育リーグ中日戦を視察。試合前のベンチで「我々はこれから、ジャイアンツというみこしを担いでいく。1人1人が先頭きって担いで欲しい。オレも担ぐ。そのみこしの上に、ファンを乗せるくらいの気持ちでやってほしい」。