今年のドラフト候補投手で最速を誇るのが、ヤマハの157キロ右腕・鈴木博志投手(20=磐田東)だ。高校時代は最速143キロで全国的には無名だったが、入社2年目に素質が開花し152キロを記録。一気にドラフト1位候補に躍り出た。自慢の直球に強いこだわりを持ち、憧れはレッドソックスの守護神クレイグ・キンブレル(29)。夢は「世界一のクローザー」だ。

 ゆったりしたフォームから放たれた剛球が、勢いよくミットをたたく。運命のドラフト会議を前に、鈴木がリラックスした表情で心境を語った。「あまり考えないようにしています。自分の武器は、やはりストレート。変化球や制球は練習で身につく部分もありますが、スピードは生まれ持ったもの。追い求めていきたいと思います」。

 磐田東1年時に最速143キロをマークしたが、2年冬に右ひじを故障。3年夏は背番号17で、同学年の斎藤誠哉投手(21=ソフトバンク育成)の控えに回った。高3の10月に手術をすると、ヤマハ入社1年目はリハビリと、「人生初」のウエートトレーニングに費やした。入社時80キロだった体重は90キロになり、2年目春のオープン戦で最速152キロ。ドラフト解禁となった3年目も順調に成長を続け、今や最速157キロ。体重も95キロを超える。「160キロは目指したいです。まだ20歳ですし、球速は自然に伸びると思っています」と自信をのぞかせた。

 これまで主に抑えとして起用されてきた鈴木は、プロでも「抑えをやりたい」と話す。入社時から動画サイトなどで古今東西の守護神を研究。当初は全盛期の阪神藤川球児(37)に関心を抱いた。偶然にも鈴木の直球の握りは藤川と同じ、人さし指と中指をそろえる持ち方で「自然にそうなった」と話す。興味は次第にメジャーへと移り、キンブレルの160キロ超の直球に心を奪われる。「夢はメジャーで投げること。『世界一のクローザー』と言われるようになりたい」と将来のメジャー挑戦も視野に入れる鈴木。夢も体もビッグな20歳は「1位はその年1番の評価の証拠。1番いい順位で行きたいです」と笑顔。球速も指名もNO・1でプロの世界に飛び込む決意だ。【鈴木正章】

 ◆鈴木博志(すずき・ひろし)1997年(平9)3月22日、静岡・掛川市生まれ。小3から野球を始める。中学はエースで4番。磐田東で最速143キロ。ヤマハでは都市対抗野球、日本選手権に登板した。右投げ右打ち。181センチ、95キロ。50メートル走6秒2。家族は両親と妹。血液型A。