仙台6大学野球の秋季リーグ戦が今日1日に開幕する。宮城教育大の最速151キロ右腕・松下圭太(4年=福島)がケガから復活し、同大学初のドラフト指名を待つ。昨秋のリーグ戦で右肘を疲労骨折。今春は全休したが、辛抱強くリハビリを続け、フォーム改造もあって力強い速球が戻ってきた。プロ志望届を出す意向を明かし、大学生活最後のリーグ戦を前に「育成指名でもいい」と、なりふり構わずスカウト陣にアピールする。

松下が「国立大の星」になる。高校時代の憧れが、明確な目標に変わった。一時は諦めかけたプロ入りへの夢が、再び現実味を帯びてきた。開幕戦の相手は昨秋、途中降板から戦線離脱につながった仙台大。約1年ぶりの公式戦登板は先発マウンドを予定しており、「サポートしてくれた方々への感謝を忘れず、野球ができる喜びを感じながら投げたい」と話した。

昨春は最速151キロをマークして一躍、スカウトも注目する存在になった。だが秋に右肘を痛めて手術。約2カ月間、ギプスで固定するなど、本格的な投球再開まで半年以上のリハビリを強いられた。今春も全休したが、執念でラストシーズンに間に合わせた。

リーグ通算は30試合(9先発)に登板して3勝12敗。際立った数字ではないが、奪三振率7・97は光る。広島、阪神でプレーした元投手の高橋顕法監督(43)も「先発完投の経験は少ないが、制球が良くなった。育成しだいで伸びしろはある」と期待する。

「野球を見るのも嫌だった」という長く苦しいリハビリが、心身とも成長させた。昨春は福島高の同期、立大・手塚周投手(3年)が大学日本一に貢献。ただ自らは肘を故障し、焦りを募らせた。それでもリハビリ期間に、肘に負担の少ないフォーム改良に成功。毎日1~3キロの水泳練習も取り入れ、肩など関節の可動域を広げ、伸びにつながる直球の回転数も増した。故障明けの最速は146キロだが、19日の富士大(北東北)との練習試合は、数球団のスカウトの前で3回を無安打に抑えた。

大学で野球を続けるつもりはなかったが、バッテリーを組む渡辺允基主将(4年=仙台南)の誘いで、入学1カ月後に入部。福島・飯舘村出身で、中学2年時の東日本大震災後は福島原発事故の影響を受けて、家族で福島市に転居した。母ひとみさん(52)は「自信を持ってやりなさい」と息子の夢を支援する。松下は「独立リーグでも行きたい」と退路を断ち、進路はプロ一本に定めた。【佐々木雄高】

◆松下圭太(まつした・けいた)1996年(平8)12月26日生まれ、福島・飯舘村出身。草野小2年から舘山ホークスで主に内野手で野球を始める。飯舘中では軟式野球部。福島では1年秋から投手に転向し、野手兼任でベンチ入り。2年秋からエース番号を背負う。宮城教育大では1年春にベンチ入りし、同秋にリーグ戦デビュー。家族は母と兄2人、姉。右投げ右打ち。183センチ、84キロ