阪神上本博紀内野手が復活弾を放った。実戦形式のケース打撃に先頭打者で登場。右腕才木浩人投手の初球をフルスイングし、左翼芝生席に突き刺した。

昨季は左膝のケガで苦しんだ男が存在感を発揮。矢野燿大監督は17日の日本ハム戦(宜野座)で1番に起用することを明かした。

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沖縄の空に復活ののろしを上げた。午後から行われたケース打撃。先頭で打席に立った上本は、才木の1球目を見逃さなかった。「いつも初球からと思っているので」。内角137キロをフルスイング。快音を残した打球が左翼芝生に飛び込んだ。突然の出来事に週末で埋まった宜野座のスタンドは一瞬の静寂。直後にどよめきが起こった。

練習でしか対戦することのない自軍のピッチャー。その初球をしっかり捉える技術と心構えが上本にはあった。矢野監督は「なあ…、すごいなあ」と感嘆。「初球、打とうという気持ちがありながらじゃないと、あれは振れない。しかも、才木も2段モーションやから。結構タイミングも、難しいと思うんだけど」と高く評価した。

決意がにじむ。昨年5月5日の中日戦(甲子園)で、左膝前十字靱帯(じんたい)を損傷。同年6月に再建術を受けた。リハビリをへて、7日の紅白戦では約9カ月ぶりに「1番二塁」で実戦復帰し、左前打をマーク。故障明けながら、キャンプ1軍スタートを決断した矢野監督の思いに応える躍動だ。

ポジション争いが熱くなってきた。本職である二塁には昨季チームで唯一全試合に出場したキャプテン糸原がいる。ルーキー木浪も結果でアピールを続ける。17日には日本ハムとの練習試合が予定されており、矢野監督は「明日も1番でいこうかなと思っている」と明言。俊足でパンチ力のある上本がリードオフマンで力を発揮すれば、打線にも厚みが増す。復活の男は「次は次でしっかりとやります」と静かに闘志を燃やした。【桝井聡】

<上本ケガとの闘い>

◆右足首捻挫 17年5月5日、広島戦の二塁守備中に右足首を捻挫。慢性的な痛みと戦いながらのプレーが始まった。

◆手術 同年11月9日に、東京都内の病院で右足関節(そっかんせつ)の鏡視下手術を受けた。同日退院。

◆3試合連続猛打賞 翌18年は開幕から好調な打撃を見せ、5月1日DeNA戦から同4日中日戦まで3試合連続猛打賞の大当たり。

◆左膝負傷 5月5日中日戦で1回、二盗で滑り込んだ際に左膝をひねった。そのまま退場し、車椅子で病院へ向かった。登録抹消。

◆離脱 同8日、「左膝前十字靱帯(じんたい)の損傷」と診断が下った。打率4割2分2厘と好調だっただけに、衝撃が走った。

◆また手術 6月に大阪府内の病院で「左膝前十字靱帯(じんたい)の再建術」を受け、15日退院した。

◆残留 FA申請期間最終日となった11月13日、行使せず残留を表明した。