スタンドで見守る母へ、そして亡き恩師へ-。日本ハム平沼翔太内野手(21)が、プロ4年目でうれしい初V打を放った。

7回1死三塁から、右翼フェンス最上部を直撃する先制の適時二塁打。元センバツ優勝投手の一撃で、苦手にしていた楽天の辛島航投手(28)を破った。チームは2カード連続の勝ち越し。勢いに乗ったまま、18日からは、1・5差で追うソフトバンクとの首位攻防戦に臨む。

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一直線に伸びた打球は、右翼席まで、あと数センチだった。7回、投手戦の均衡を破るフェンス直撃の先制二塁打を放った日本ハム平沼は「もうちょっとでした。まだまだ力がないと思いました」。プロ初本塁打はお預けとなったが「次は、入れます」と、きっぱりと言い切った。

福井・敦賀気比高時代に、甲子園で大活躍した。3年時のセンバツでは、エースで4番としてチームを引っ張り、福井勢を悲願の初優勝に導いた。しかし、プロではエリートというわけではない。15年のドラフト4位。投手としてではなく、未経験の遊撃手としてだった。不慣れなポジションにミスは連発。それでも、必死に食らいついた。「今は、もう投手のことを考えることは、まったくなくなった」。投手というポジションに、未練はない。この日、8回無死で、詰まった打球に猛チャージをかけ三ゴロに仕留めた。

ハートの強さは、ピカイチだ。担当だった熊崎スカウトは、平沼の「気持ちの強さ」を買ったという。中3から書いていたという野球日記には、こう記されていた。「<1>福井(の高校)で全国制覇<2>150キロを出す<3>プロに行く」。多くを実現した根性は、プロでも芽を出し、つぼみとなり、今、ゆっくりと開き始めている。

プロ初の決勝打は、2人の恩人にささげた。1人目は試合を観戦していた母の美佳さんへ「母が見に来てくれたので、ヒーローになれて良かった。もっと、もっとヒーローになれるよう頑張ります」。そして、もう1人は少年野球時代に師事した故・小林繁氏(巨人、阪神)だ。「いろいろなことを教わったけど、ようやくここまで来られた。今日はいい報告ができる」。誰もが認めるガッツマンは、プロでも頂点だけを見つめている。【中島宙恵】

◆日本ハム平沼プロ成績 初出場は2年目の17年4月20日オリックス戦で、代打で登場して空振り三振。初スタメンは同年10月5日西武戦「9番遊撃」だった。初安打は3年目18年6月17日ヤクルト戦の左前打で、この年は7試合出場9打数3安打。今季は5月3日西武戦で初マルチ安打、同4日ロッテ戦で初打点をマーク。

▽日本ハム栗山監督(チームが苦手にする辛島から決勝打の平沼に)「怖がらずに、しっかり打ってくれた」