楽天由規投手(29)が、移籍後初登板となったイースタン・リーグ西武戦で2回を1安打2三振と、上々の無失点デビューを果たした。昨季限りでヤクルトを戦力外となり、育成契約で故郷を本拠にする楽天に入団し、右肩痛からの再起を目指していた。この日は、昨年6月2日の楽天戦(交流戦)以来の実戦登板で、最速151キロをマークするなど復活をアピールした。また開幕戦で左もも裏を痛め2軍調整が続いていた岸孝之投手(34)は、2度目の調整登板で先発し7回2安打7三振と圧巻の投球を見せ、今月中の1軍復帰に向け大きく前進した。

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由規の新たな復活ストーリーが幕を開けた。123番のユニホームを身にまとい、「楽天由規」として初めて迎えた公式戦。「メチャクチャ緊張してマウンドで震えていました」。先頭佐藤への初球、指に掛かった直球でファウルをとり自信を持った。3球目、打者を幻惑するクイックから最速151キロを計測した。これまでシート打撃でも140キロ台前半。反動をあまり使わない投球動作から出た想定外のスピードは、進化の証しでもあり、速球派の本能でもあった。「気持ちが入ってアドレナリンが出ていたんだと思います。150が出たのはホッとしました」と笑顔を見せた。

ヤクルト時代の昨年6月以来、11カ月ぶりの実戦登板までは紆余(うよ)曲折だった。右肩を痛め、長いリハビリの日々、そして戦力外からの育成契約。キャンプでは順調な回復を見せていたが、3月中旬に左ももを痛め完治に1カ月を要した。「ここまで来るのに長かったと思いましたが、マウンドに上がったらそんなことを考えずに投げられました」。そして先発で7回を2安打と貫禄の投球を見せた岸からの仙台リレーに、「いいリズムに乗せてもらった。人生初のセーブじゃないですかね」と無邪気に笑った。

三木2軍監督は「マウンドに上がるとスイッチが入ったんだろうね。球がどうのより、彼にとっては周りに支えられて再びマウンドに立てたことが一番の収穫。1歩目を踏み出せたんだから」と喜んだ。球速だけではない。ボールの伸びの指標といわれる回転数が復活を裏付ける。8回2死から、鈴木への3球目、144キロの直球が2535回転(毎分)を計測。日本では2400回転でトップ級と言われる中、楽天松井の2590回転に迫る。この日の岸の最高が2356回転だった。確かな手応えをつかんだ由規は、「やっとスタートを切れた。少しずつイニングを伸ばしていきたい。そして支配下になれるよう頑張りたい」と希望に満ちた表情で地元での初登板を終えた。【野上伸悟】