ソフトバンクが今年の「鷹の祭典」初戦を延長12回、劇的なサヨナラ勝ちで制した。東京ドームで開催された西武戦は、両軍合わせて6本塁打、23安打の激戦。9回に上林誠知外野手(23)が起死回生のソロを放って追い付くと、12回に代打栗原陵矢捕手(23)がサヨナラ犠飛で勝負を決めた。専用ユニホームを着用する恒例のイベントは壮絶な戦いで幕を開けた。

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5時間21分の熱戦を決めたのは、代打栗原だった。延長12回1死満塁。西武5番手佐野の初球を中堅へサヨナラ犠飛。ナインにもみくちゃにされ、工藤監督とは笑顔で抱き合った。栗原は「気持ちいい。みんなが迫って来て、水などかけられて…。アクエリアスの味がしっかりユニホームについてます」と初のサヨナラ体験を振り返った。

「自分が決めるつもりで打席に入った。ゴロを打ったら負け、フライを打つイメージだった」と冷静に外野へ犠飛を狙った。ホーム試合でお立ち台に立つのはプロ5年目で初めて。「本当に遅くまでありがとうございました」と最後まで残ったファンに感謝した。ヒーローになる7時間前、ブルペンで始球式の練習をしていた女優吉岡里帆(26)の姿を他のナインと見に行き、幸せの笑みで対面できたことを喜んでいた。第3捕手で出番は限られているが「代打は初球から振っていかないと」と自慢の打力と積極性で、ファンと仲間を笑顔にした。

もう1人のヒーローは9回に同点ソロを放った上林だ。6-7の9回1死、西武の抑え増田の151キロを捉えて右翼ポール際へライナーでたたき込んだ。「弾道が低かったが伸びて入ってくれてよかった」。その直前。勝利まであと1球から、新守護神甲斐野が森に逆転2ランを許していた。6月20日のヤクルト戦で初セーブを挙げて以降、セーブ機会での失敗は初めて。そんなドラフト1位ルーキーを救った。この日の上林は今季初の2発、プロ初の4安打で3打点と大暴れだった。

打率はまだ1割台。6月29日にランニング本塁打を含む3安打を放った翌30日からここ7試合は23打数1安打と不振を極めていた。「1人だけずっと打てなくて周囲に心配をかけてしまって」と悩みは深かった。「ここから上がっていくしかない。前を見て頑張っていきたい」と、この4安打を脱出へのきっかけにする。

この日は毎年恒例の「鷹の祭典」初日。東京ドームにはソフトバンク球団史上最多となる4万6824人のファンを集め「チャンピオン奪Sh!(ダッシュ)ブルー」一色に染まる中、同イベント史上初のサヨナラ開幕となった。9日は東京から本拠地ヤフオクドームへ移動しての試合となる。工藤監督は「今日の試合はみんなで勝ち取った勝利。みんながよく粘った。ナイスゲーム」。長時間試合の翌日で、選手たちには厳しい状況だが、劇的勝利の勢いに乗り前半戦残り2試合をしっかりと戦い抜く。【石橋隆雄】