秋のリーグ戦が開幕した。今秋ドラフトの目玉、明大の森下暢仁(まさと)投手(4年=大分商)が東大打線に不用意な本塁打を浴びて苦しみつつ、延長12回を2失点完投で先勝につなげた。開幕式の選手宣誓でつまずき、大学日本一の胴上げ投手があやうく金星を献上するところだった。

プロを見据えた充実の秋。森下が直面したのは、さらに厳しくマークされたエースの宿命だった。

試合後は敗戦投手の顔つき。「チームが勝てたのはいいけど、相手投手をもっと早く打たなければいけなかったし、先制されたのも反省点です」。春を制した主将として、最下位東大に苦戦した課題を挙げた。

続けて投球について「ストレートは良かったと思いますが、変化球が全然でした」と言った。ストレートは最速152キロ。東大は振り遅れていたが、カーブのブレーキは甘くチェンジアップも制球できなかった。

ストレートがいい時の相棒、カットボールに活路を見いだしたが、狙われた。4回、石元悠一三塁手(3年=桐朋)に右翼席へ先制ソロを浴びた。「左打者の膝元なら大丈夫だろうと思ったんですが。低めでしたが、あんなにきれいに打たれるとは」。154球で12回を7安打2失点は、満足とはほど遠い。

セレモニーの選手宣誓では、途中で言葉が途切れた。「『ガンバレ』という声援も飛んでました。開会式では歩きながらブツブツ(宣誓文を)言ってましたし、セリフが飛んだ数秒間は何を思っていたのかすら思い出せません」。正直な言葉に報道陣から笑いが起きると、この時だけ、つられて白い歯がこぼれた。

満を持しての開幕戦で打たれ、投球よりも5番打者でのバットの方が印象を残した。ドラフトまで1カ月。総合力の即戦力としてプロの評価は定着した。秋のリーグで、全球種を自信を持って投げてこその、大学NO・1投手の看板だ。【井上真】