山賊は負けても悲壮感なし。首位西武がロッテに大敗し連勝が3で止まったが、2位ソフトバンクも敗れたためマジックを8に減らした。辻発彦監督(60)は8回1死一、二塁、木村文紀外野手(31)の三振判定を巡ってリクエストをしたが覆らず。左小指に当たったとアピールしきれなかったことに「達川さんの爪のあかでももらってこい」と笑い飛ばした。西武の最短優勝は21日となった。

 

  ◇    ◇    ◇

ラッキーボーイが一転「アンラッキーボーイ」となった。4点を追う8回1死一、二塁、木村がロッテ田中の内角高めを打ちに行った。判定はファウルチップを捕手田村が捕球したとして三振だったが、辻監督は投球が木村の左小指に当たったとリクエストを要求。しかし、決定的な証拠映像がなく判定は覆らず。流れを失ったチームは大敗を喫した。

試合後、辻監督は穏やかな表情で報道陣の前へ。判定については「手袋外して小指が赤くなっているんだからね…。木村もほんとにクソ真面目だからさ」と苦笑い。「達川さんの爪のあかでももらってこいって」と過剰なまでの死球アピールで有名な元広島の達川光男氏の名前を出し、アピール不足を笑いに替えた。

13日に31歳の誕生日を迎え、前日15日ロッテ戦で外野手の交錯を誘う“サヨナラランニング本塁打”を放った(記録は失策)木村だが、この日は4打数4三振とブレーキ。判定には「マジで小指当たったっす」と嘆きつつ「しょうがないっす」と受け入れた。監督からの“アピール不足”を伝え聞くと「いきなりすぎて(アピール)できなかったです」としょんぼり。「昨日からのこれはツライっすわ。こんなんで帰れないです」と、バットを手に室内練習場に向かった。

チームの連勝は止まったが、ソフトバンク、ロッテとの本拠地6連戦を4勝2敗と勝ち越した。指揮官は「上出来でしょ。3つ(ロッテに)勝った時はコイツら本当にすごいなと。目指すところがあるんで選手は必死にやっているよ」と選手をたたえた。敗戦にも「これで髪を切りにいけるよ。バッサリいってくるかな」と重苦しく捉えるムードはない。身も心もきっぱりと切り替え、リーグ連覇へ再加速する。【鈴木正章】

▽西武森(3安打1打点)「(7回の適時打は)うまいこと拾って打つことができたと思います。1点1点返していくつもりで打席に入りました」

▽西武本田(6回途中6失点で6敗目)「あの回(6回)初めて先頭を出したのが悔やまれます。フライアウトが多かったのはボールが高かったということ」

◆達川と死球 投球が体の近くを通ると、当たったような演技を見せ、平然と一塁へ向かうことが多々あった。捕手や球審に止められても、とっさに傷をつくるなどして「当たった」とアピールすること多数。現役15年で通算62死球だが、日本シリーズでの通算6死球は西武伊東と並び歴代最多。