ヤクルト村上引っ張ったフォーム磨け/和田一浩分析

<解体新書 和田一浩氏>

ヤクルト村上宗隆内野手(19)はここまで35本塁打を放ち、53年中西(西鉄)が持つ高卒2年目以内最多の36本にあと1本に迫る。

一方で、打率は2割3分3厘で、三振は両リーグ最多の175に上る。連続写真でフォーム分析する「解体新書」で、日刊スポーツ評論家の和田一浩氏(47)が7、8月のスイングを比較。わずか1カ月間での変化を解説するとともに、課題を指摘した。

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※<1>数字=7月時フォームの番号、(1)数字=8月時フォームの番号です

 

高卒2年目で35本塁打を放っている村上の素質に、疑問を抱く人はいないだろう。本拠地が狭い神宮球場とはいえ、30発以上は簡単に打てない。しかし、このまま日本を代表するホームランバッターになるかと問われれば「まだ分からない」としか答えられない。2つの連続写真は、わずか1カ月しか違わないが、足の上げ方、構えのバットの角度など、試行錯誤しているのが垣間見える。

<1>ではバットを立て気味に構えているが(1)はバットの先を投手側に入れている。どちらとも軸足に体重を残そうとしているが、(1)は骨盤の角度も前かがみになり、上半身も投手側に突っ込み気味。上半身が突っ込み気味でも、今の頭の位置より投手側に突っ込まないようにするための基準にしているならいいが、基本に忠実な体の軸の作り方はドッシリ感がある<1>だろう。

バットの角度は、トップでバットのヘッドがどこに収まるかによって決まるから、この時点でどちらがいいとは判断できない。

村上は速球に差し込まれやすい弱点がある。<2>ではまだ右足を上げ始めていないが、(2)では絞るようにして上げ始めている。おそらく、1カ月の間で速球に対して立ち遅れないように工夫しているのだろう。<3>から上げ始め、シンプルに踏み込んでいる<5>に対し、1カ月後は右足の上げ方まで変えている。(3)から踏み出しているが、その流れのまま踏み込まず、(4)から(5)に移るときにスパイクの裏が投手側に見えるような動きが入っている。このように踏み込むなら、捕手側に引くように右足を上げない方がいい。体重移動が難しく、体の内側で回りにくくなってしまう。

ここまでの動きで共通して気になる点がある。どちらとも構えた時にグリップが左耳の横辺りにあるが、少し高すぎる。トップの<5>と(6)と比べると、構えの位置より低くなっている。「ビンタ」する時を想像してもらいたい。手を高い位置から下げるより、上げてからの方が強くたたけるはず。この理屈と同じで、トップでのグリップは一番高い位置になるのがベスト。構えた時とトップでの位置が逆になった方がボールを強くたたける体勢がとれる。

もう1点気になるのが、<6>と(7)での左足が折れるタイミングが、若干速いところ。右投げ左打ちの打者は、左足が利き足ではないだけに粘りが足りない。折れるタイミングの目安は、左肘が体の前に入ってくるのと同じぐらい。<6>は遅れているし、(7)も若干だが遅れている。

村上の長所は、逆方向に大きな当たりを打てるところだが、問題なのは引っ張った時だ。左足の折れるタイミングが速いから、左肘→グリップ→バットのヘッドの順番で出てくるタイミングが遅れる。腕とバットが遅れると、体の正面でボールを捉える時にバットをこねてしまう。バットが内側から出ず、外側から出てしまうため、打球が上がりにくくなる。

<8>はインパクト後だが、まだヘッドは返っていないし、(8)のインパクトの瞬間は見事。ただ、<8>は真ん中高め140キロを左中間に二塁打したもので、(8)は内角145キロ直球を中堅に本塁打したもの。どちらも引っ張った打球ではない。外角や低めの球を中堅から左翼方向に打つのならいいが、どちらも引っ張れる球。これを逆方向に長打できる技術はすごいが、逆に言えば、この球を引っ張って長打にし、外角から低めの球を中堅から逆方向に長打できれば本塁打は急増し、50~60発打てる打者になれる。

2つの連続写真を見る限り「素晴らしい打者」という印象が残る。しかし、これだけの打撃フォームができるのに、引っ張った時や、凡打や空振りした時のスイングは「素晴らしい打者」と感じる時と比べ、ギャップが大きい。それが三振の多さと、2割そこそこの打率しか残せない理由だろう。ダイヤモンドの原石であることは、今季で証明している。引っ張った時のフォームに磨きをかけ、光り輝くダイヤモンドになってもらいたい。(日刊スポーツ評論家)