若き力で所沢行きの切符をたぐり寄せた。ソフトバンクのルーキー甲斐野央投手(22)が、終盤の決勝点を呼び込む好リリーフを見せ、千金のCS初白星を挙げた。

表情から気迫がにじみ出た。鋭い眼光。への字に結んだ口。1点もやれない極限の場面に、全身全霊で集中していた。同点の7回1死三塁と言う場面で出番はやってきた。甲斐野は冷静に、強気に攻めた。代打ウィーラーを遊ゴロに打ち取ると、続く代打フェルナンドは空振り三振。「ベンチに帰るときにすごい歓声をもらった」。鬼瓦のように険しかった顔がほぐれ、笑顔になった。

シーズン終盤に打ち込まれる試合が増え、優勝を逃した9月24日の楽天戦でも2失点。「情けない、ダメだなと思った。それでも1軍に残してもらった」。CSまでの準備期間はコンディション調整に重点を置き、ストレッチやトレーニングもトレーナーに付きっきりになってもらった。「調子も悪かったので練習、練習って思っていたけど、アドバイスももらってオンオフの切り替えができた。しっかり準備した結果、集中してマウンドに上がれた」と短期間で調子を戻した。

今季初めて1軍に定着し、ともに戦ってきた高橋純が6回1死一、二塁を抑えた。1歳上の甲斐野を「ブルペンから顔が違うときは、絶対に抑えるとわかるし、本当に抑える。そんな試合が何試合もあった」と、一目置く右腕も今季を象徴する若き力だ。工藤監督は「このチームがここで勝負できるのも、若い力が本当に大きかった」とたたえた。がむしゃらに、日本一まで駆け抜ける。【山本大地】