変える勇気か、続ける自信か-。指揮官とクローザーの意見が真っ二つに割れた。DeNA山崎康晃投手(27)が宜野湾キャンプ第2クール最終日の9日、ブルペン入り。直球を中心に宝刀ツーシーム、昨季から取り入れたカットボール、習得中のスライダー、カーブを織り交ぜた。「まずは真っすぐ。外角にしっかりと。研究されて、できていたことができなくなってきている」と実戦をイメージして投げ込んだ。

昨季までのスタイルからの変化をもくろむ。球種の全体比率は直球とツーシームが五分五分だった。「まずは真っすぐの比率を増やしたい」とし「真っすぐかツーシームかの2択じゃなくて、もう1つ加えた3択になれば理想的」と投球の幅を広げることを念頭に置いた。新人時代から抑えを担い、5年間で163セーブを積み上げてきた。この先の進化には変化が必要だと自認する。

守護神の試みを伝え聞いたラミレス監督は、正反対の持論を展開した。「リベラは基本的にストレートとカットしかなくて最高のクローザー」と通算652セーブのメジャー最多記録を持つ元ヤンキースの大投手を例に挙げた。「今までやってきたことに絶対的な自信があるのであれば、そのままでもいいかな」と山崎にも同等の目線を向けた。

一流アスリートは常に前進を追求し、研究と努力を惜しまない。ただ、代名詞を勝ち取れる超一流となれば、不用意な変化は後退のリスクが大きくなる。現役時代に通算2000安打を達成し名球会の一員でもある指揮官は「もちろんそこで球種を増やすことはできるけど、今までにないチャレンジして打たれてしまうと自信をなくす恐れもある」と懸念を示した。

考え方は割れたが、対立ではない。ラミレス監督は「このままクローザーやっていれば、今までで一番若い名球会選手になれるペースできている」と言った。ハマの小さな大魔神-。山崎の存在はもう小さくない。【為田聡史】

◆2球種で勝負した投手 直球以外に変化球をほとんど1種類しか投げなかった最近の主な投手は、江川卓(カーブ)野茂英雄(フォーク)佐々木主浩(同)ら。上原浩治は大リーグ時代、スプリットを決め球とし、13年に37人連続アウトをマークした期間中、内訳は直球62球、スプリット78球、スライダー3球。全体の98%が直球とスプリットだけで、ほぼ2球種を自在に操った。