日本ハム吉田輝星投手(19)が聖地凱旋(がいせん)で、ほろ苦さを残した。6日、阪神戦(甲子園)に3番手で6回から登板。金足農時代の18年夏決勝以来の甲子園マウンドだったが、4四球と乱れた。2回1安打無失点で踏ん張ったが、課題が目立つ内容になった。開幕1軍へ食い込むために、聖地での経験を糧にする。

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歓声だけがない甲子園に、吉田輝が帰ってきた。「何回も投げているので、投げにくかったとか言い訳にはならない。すごい気持ちが引き締まっていました」。懐かしい空気を吸い込み、スイッチを入れた。18年、金足農のエースで挑んだ夏の甲子園決勝以来のマウンド。当時のような盛り上がりに包まれることはなかったが、変わらない景色を焼き付けた。「ここで野球をやることは、自分の中で特別なことになっている」と胸に刻んだ。

甲子園のマウンドに立ち、思い出したことは「やっぱり真っすぐですね」。最大の武器、直球で先頭ボーアを攻めたが四球を出した。この日最速146キロを計測も、制球難が目立った。1死一塁から福留にも四球。「あの時よりは良い真っすぐを投げられてると思うんですけど、やっぱり制球面で考えると強いボールを投げている分、ばらつきを抑えるのが難しい」。捕手宇佐見の、2度の盗塁阻止で失点は免れたが苦しい内容だった。

2イニング目はスライダーなどの変化球を交え、的を絞らせないようにしたが球は上ずった。2死から北條に中前打を許したことをきっかけに、2者連続四球で満塁のピンチを招いた。中谷を外角のスライダーで見逃し三振に仕留め失点を防いだが、クイック面の課題を実感。「クイックが出来てくるとワインドアップでも良い球が出る。ピンチのときも、もっと良い球を投げられるように練習していきたい」と自らに命じた。

聖地に送り出した栗山監督は「まだまだ、あの時のキラキラした感じで投げられていたか? らしくない、投げっぷりが。超原点にかえっているわけだから」と期待の裏返しで、厳しい言葉を投げかけた。開幕1軍入りへ、猛アピールが続く。無観客の静まり返った球場に、吉田輝は「制球が悪かったので、あんまり声援とか気にする暇がなかった」と必死だった。甲子園の土を踏み、必死さを増して1軍スタートを狙う。【田中彩友美】

▽日本ハム木田投手コーチ(吉田輝に)「本人はもっとできると思って投げたと思うが、今日はできなかったことの方が多かっただろう。それでも、ぐちゃぐちゃにはならなかった。まだまだ、これから。もっと勉強してもらいたい」

◆吉田輝と甲子園 金足農(秋田)のエースとして、18年夏甲子園に出場。県大会初戦から甲子園準決勝までの10試合で完投勝利も、大阪桐蔭との決勝は先発したが5回までに12失点で6回から右翼に。秋田大会5試合を636球で突破した鉄腕は、甲子園は6試合881球を投げて準優勝だった。

◆吉田輝の昨季成績 登板した4試合いずれも先発で1勝3敗、11回を投げて打者59人に被安打18、15失点で防御率12・27。13三振を奪い、奪三振率は10・64だった。