完全復活へのカウントダウンが始まった。左膝蓋(しつがい)骨骨折からの復帰を目指す日本ハム上沢直之投手(26)が27日、千葉・鎌ケ谷スタジアムで、故障後、初めてフリー打撃に登板した。

打者相手の投球は、実に283日ぶり。30球を投げ安打性1本に抑えて、視察した栗山英樹監督(58)に回復ぶりをアピールした。再び打撃投手、もしくはシート打撃などで調整登板し、実戦に復帰する見通し。

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約9カ月ぶりの“勝負”だった。後輩3選手の打撃投手を務めた日本ハム上沢は「ようやく、野球選手っぽくなってきた」と、屈託なく笑った。悪夢のような大ケガから、打者に対して投球するのは約9カ月ぶり。球種を知らせず、30球。「今日はストライクゾーン周辺に投げることしか意識してなかった」と言う通り直球の最速は140キロ止まりも、シュートなど4種の変化球を織り交ぜて安打性1本に抑えた。

「マックスで(腕を)振っていないわりには、スピンの利いたいいボールが行っていた」と、納得顔だ。内野ゴロ3、フライ1、ファウル5。カットボールで万波のバットを折り、カーブ、スライダー、直球で3つの空振りを奪った。宝刀の高速フォークボールとチェンジアップは「まだ投げなくてもいいかな」。見守った栗山監督が「いいニュースがない中で、久しぶりに心が震えるというか感動しました」と、絶賛する投げっぷりだった。

キャンプ終了後から、体重は3キロも落ちた。ただ、それは、しっかり運動量をこなせている証しでもある。18年にチーム最多11勝を挙げた背番号15は「監督から『球の強さをすごく感じた』と言ってもらえた。ケガした直後に病室に来てもらっていたので、やっと元気な姿を見せられて良かった」。再度、打撃投手かシート打撃での登板をへて、2軍戦での実戦復帰をもくろむ。

もう、体の不安はない。これからは、技術的に球の精度をどこまで高められるかに焦点は移る。新型コロナウイルス禍で、開幕の先行きは不透明。「複雑な心境ですけど、もしかしたら、開幕に間に合うかもしれない。これからは、1軍で抑えられるよう、そのレベルに持っていけるように頑張ります」。復活の日は、着実に近づいている。【中島宙恵】

○…上沢から唯一、安打性を放った清水は「直球は差し込まれるような球。『さすがやな』と思いました」と先輩を立てつつも、初球の136キロ直球を右前へ運び大喜びだ。自身も右肘痛で2軍調整中。上沢の1軍復帰戦を見据え「僕が(球を)受けたい気持ちはある。苦しんでいるところを、ずっと見てきたので。組ませてもらえる機会があれば、サポートして白星を付けてあげたい」と、女房役に立候補した。