逆境に屈しない人々が、球界を支えている。新型コロナウイルス感染拡大で球団フロントも普段通りに活動できない状況が続くが、その時間を再開後につなげようと奮闘中だ。オリックスの「コロナ禍にも負けずチームを支える人々」にスポットを当てる。前編は、スカウト陣をまとめる牧田勝吾編成部副部長(46)。

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オリックスのスカウトの屋外活動は、4月6日から休止している。緊急事態宣言を受け、球団はスカウトの視察業務をストップ。例年ならドラフト候補を追いかけて担当地区を駆け回るスカウトたちも、自宅待機を続けている。1月1日に現職に就いた牧田編成部副部長は、自宅時間を使って読書に励んでいる。

牧田氏 今の立場になって痛感したのが、言葉の大切さでした。自分の言葉の拙さで、うちのスカウトたちに伝えたつもりのことが相手に伝わっていない場合もある。それでは意味がないと思い、伝える力を身に付けようと本を読むことにしたんです。

脳科学とスピーチの専門書を1冊ずつ購入。大事と思う箇所に線を引き、時間をかけてこの1カ月でじっくり読み込んだ。真意を伝える、相手をその気にさせる表現力を学んだ。

今年は、昨年まで1軍打撃コーチだった下山真二スカウト(44)や北京五輪ソフトボール金メダリストの乾絵美スカウト(36)らが加わった。「球界初の女性スカウト」も交えた顔触れを強力な仕事人集団にして、5年連続Bクラスのチームを変える人材を獲得したい。育成による強化を目指すオリックスは、昨秋ドラフトで育成8人を含む13人を指名。スカウトは手腕を発揮できる仕事場にいる。

牧田氏 うちのみんなには「ほれた選手は全員取ろう」と伝えています。チームを強くしたいですから。言葉には不思議な力がある。人をやる気にさせる。言葉をちゃんと使うことができたら、いろんなことを変えられる。視察ができるようになったら、移動時間はひたすら本を読みます。

読書による「言葉力」の向上で、「育成のオリックス」を支える。【堀まどか】(つづく)

◆牧田勝吾(まきた・しょうご)1974年(昭49)4月13日、静岡県生まれ。島田商-愛知学院大-日本通運を経て01年ドラフト11巡目でオリックス入団。主に三塁手として活躍し、08年の引退後からスカウトとして活動。後藤、吉田一らドラフト1位の獲得を手がけ、現在の主力でも若月、中川らを獲得。昨年末で退団した古屋英夫氏に代わり、編成部副部長に就任した。