西武栗山巧外野手(38)が4日、通算2000安打を達成した。偉業を成し遂げた20年目のベテランにあこがれる若者が、ライバルチームにいる。プロ2年目のロッテ佐藤都志也捕手(23)。6日に首位に立ったチームで、学びをどう生かすか。オンラインインタビューで思いを聞いた。【取材・構成=金子真仁】

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心の師・栗山からの学びを胸に刻みながらも、そう簡単に打てないのがプロ野球。佐藤都は悔しさを顔に出した。

栗山の偉業達成から約3時間後。ZOZOマリンでの日本ハム戦で、同点の9回1死に代打で登場した。カウント3-1から3球ファウルで粘ったが、二塁ゴロに倒れて引き分け。この先は1勝の重みが増す。

「チームもすごく良い雰囲気ですし、何とか後半で追い越し、逆転という試合が多い。そうなると1つのチャンス、チャンスメークが大事になってくると思う。代打やDHを任されるので、何とかチームのために、を重点的に頑張りたいです」

思いの原点を、栗山からもらった。勝負強い左打者としてあこがれた。思い出のシーンは多い。東洋大で下級生の頃、寮の部屋で西武対楽天のテレビ中継を見ていた。代打で登場した栗山は、当時楽天のハーマンからサヨナラ3ランを放ち、淡々とダイヤモンドを回った。

「うわっ、すごいな、って。栗山さんのことをいろいろ調べるようになって。試合の入り方も、打席に入るまでの準備も。当時は代打が多かったと思うんですが、1打席1打席、チームに勢いを付けるために自分にできることを、というのが響いて。キャプテンでチームを引っ張ってきた栗山さんが代打に回って、それでもチームのためにバットを振っている、というところにすごさを感じました。心から尊敬するようになりました」

自身に重ねた。でも自分は違った。

「ちょうど自分も代打が多くなっていた時期で。勝手に、自分の中でも当時はレギュラーになりたい気持ちがすごくあって、何とか結果出さなきゃとか、自分のことばかり考えてた時期だった」

聖光学院(福島)で甲子園に出場し、強豪大学へ。プロ入りを目指して懸命に技術を高める中で、フォア・ザ・チームの精神が刺さった。準備の大切さ。勝利への意識。夢をかなえる前に、大事なことを学んだ。

プロ1年目、高知でのオープン戦であいさつした。緊張の瞬間。「プロ野球選手として、じゃなかったです、正直。ファンの1人として、多分」と表情を崩しながら回想した。

もちろん、今は違う。

「打たせたくない捕手と打ちたい打者、ですね。憧れているからこそ、抑えたらすごいうれしいし、打たれたら悔しい。そういうのはあります。チャンスで栗山さんに回ってくると、すごく集中されてるなと感じるので。捕手としてすごく感じる部分はあります」

チームが優勝を目指す中で、今は捕手というより、代打やDHなど打撃面を買われる起用が多い。現在の打率は1割台ながら、アウトになるにしても打球が強くなった。平均で150キロ台中盤~後半をマークする打球速度は、相手バッテリーにも脅威になりうる。

「前半戦の時より打席での余裕というか。自然体で構えられてて。2軍で下半身で打つことの大事さをコーチの方々にあらためて教わって。1発で仕留めて、いいライナーを飛ばすことを2カ月間、ずっとやってきました」

その技術を生かすのが栗山からの学びだ。あの頃に感じたことは、今でも根っこにある。

「結果的に打つことがチームのためになるのもあるし、チームが勝つために自分が犠牲になることもあると思う。犠牲フライでも進塁打でも。自分の結果よりも、チームのためにできることを。自分の中で大きく意識が変わりました。すごく影響を与えてくれた人です」

偉業を心から祝福し、勝負の秋へと引き締めた。