新天地でいきなり優勝だ! オリックス能見篤史投手兼任コーチ(42)が、自身16年ぶりのリーグ優勝を記念し、日刊スポーツに独占手記を寄せた。16年間在籍した阪神を昨年退団し、コーチ兼任で移籍。今季はリリーフで26試合に登板し、0勝0敗2セーブ、防御率4・03の成績で優勝に貢献した。若手選手の“生きる教科書”となって投手王国構築に尽力。20歳近く年の離れた山本や宮城らと、歓喜の瞬間に酔いしれた。【取材・構成=真柴健】

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日刊スポーツ読者のみなさん、いつも応援ありがとうございます! 能見篤史です。

オリックスに来て1年目で優勝。僕自身は阪神で新人だった05年以来、16年ぶりのVでした。今年は兼任コーチでプレーさせていただいて登板が26試合。中嶋監督、高山投手コーチに配慮してもらったシーズン。今いるメンバーを中心に、僕がプラスで少しでも力になれたならうれしいです。

今年42歳で白髪も増えました。気になったタイミングで染めています。オリックスは髪を染めている選手が多いので、僕の白髪もあまり目立たないでしょ? それもチームの良い雰囲気を表しています。いや~、白髪も遺伝なんで。メッシュみたいに生えてくれたらいいんですけど(笑い)。

家族も喜んでくれています。中学生の娘に、小学5年の長男と小学3年の次男。野球ゲームで選手を1、2軍登録するときに「○○選手って今1軍?」と、すごく興味を持っていて。もちろん、古巣の阪神も気になりますよ。一緒に自主トレをしているメンバーが今、中心になって活躍している。頑張ってる姿をチェックしていますよ。

僕は兼任コーチなので当然、試合でも投げる機会があります。若い選手たちに「こうすれば、意外と抑えられるんだな」とか、配球も「こういうのがあるよ」と実戦で伝えられる。だからこそ、ちゃんと抑えないと。そう思って毎日出番を待った1年でした。身をもって実践しないと選手への言葉も通じない。受け止めてもらえないんです。

今はもう、球が速いわけではない。でも、意外と真っすぐで押せるんだなと感じてほしい。そのひとつのサンプルとして僕を見てほしかった。捕手に対しても、そう思っています。捕手は一番抑える確率の高いボールを選択する。投手の特徴を踏まえて一番良いボールを選択します。逆算して、最終的にここで打ち取りたいと考えて、見せるボールと勝負するボールがある。駆け引きの面白さを覚えてほしいと思っています。

この1年は「監督を胴上げしたい」という気持ちが強かったです。あとは、今いる選手が「優勝っていいものだな」と感じてほしいなと。本当に良いボールを投げる投手が多いし、未来のある選手ばっかりなのでね。あの子らが思い切りはしゃいで、すごく楽しそうな瞬間が見たかった。純粋に喜んでいる姿をね。

若手を見て思い出すことは…ないです!(笑い)。あそこまで僕は純粋に、という環境ではなかった。社会人からプロの阪神に入って、結果も求められる立場でしたし、環境の違いが一番大きいかなと思います。みんな無邪気なのが正直、うらやましいですよ。すごい純粋な選手が多くて、相手チームから見ても、楽しそうに見える。僕もまだまだ、負けていられません。(オリックス・バファローズ投手兼任コーチ)

 

◆能見のオリックス1年目 昨年限りで、16年在籍した阪神を戦力外となったが、現役続行希望し移籍がかなった。過去に在籍経験のない球団への移籍では、異例のコーチ兼任となった。4月10日の日本ハム戦で挙げた41歳10カ月でのホールド、5月2日のソフトバンク戦での41歳11カ月でのセーブは、ともに球団最年長を更新。5月8日のロッテ戦ではレアードから1500奪三振も達成。6月2、3日の古巣阪神戦では甲子園のマウンドにも立ち、計2イニングを無失点に抑えた。球団は、投球だけでなくコーチとしての手腕も高く評価し、来季も契約する方針を固めている。

◆能見篤史(のうみ・あつし)1979年(昭54)5月28日、兵庫県生まれ。鳥取城北-大阪ガスを経て04年ドラフト自由枠で阪神入団。12年に最多奪三振。14年には5試合連続2桁奪三振のセ・リーグ新記録をマーク。18年6月28日DeNA戦で通算100勝達成。13年WBC日本代表。昨年オフに阪神を退団し、兼任コーチでオリックス移籍。オールスター出場2度。180センチ、74キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸3500万円。