前川丸出港! 阪神ドラフト4位の前川右京外野手(18=智弁学園)が4日、三重・津市のグラウンドで自主トレを公開した。伊勢湾を望む港町で育った高校通算37発のスラッガーは、プロ1年目の目標を初安打&初本塁打に設定。2月の沖縄・宜野座での1軍キャンプ参加の可能性もある大器は“大漁アーチ”でアピールを目指す。

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強い海風を切り裂いた。前川が公開した自主トレの打撃練習で、54スイング中5本の柵越えを放った。気温10度前後でも半袖でフルスイング。推定100メートル級の放物線を何度もグラウンド外の畑へぶち込んだ。

「高卒1年目だからといって、引いていては何もできない。自分の持っているものを出して初ヒット、初ホームランを両方打てるように。バットを振ることに関しては誰にも負けない気持ちでやっていく」

三重・津市の白塚小1年で「白塚バッファローズ」に加入し、ソフトボールをプレーしていた当時、朝も夜も練習に打ち込んできたグラウンド。原点の地でプロ1年目の覚悟を決めた。

スタートから波に乗るために、年末年始は伊勢湾の海鮮物で力をつけた。なかでも漁業を営む母方の祖父政功(まさのり)さん(71)が愛船「功勢丸」で漁獲したワタリガニは絶品。「正月で太らないように気にしていました」とトレーニングで体重87キロはキープしつつ、英気を養った。

昨夏の甲子園大会後は、政功さんの知人の船で趣味の釣りも楽しんだ。「帰ってきた時にもう1回、おじいちゃんに連れて行ってもらいたいです」。小さい頃は漁の手伝いもしたことがあるという「海の男」は、プロでの活躍を手土産に凱旋(がいせん)を誓った。

矢野監督は2月の沖縄・宜野座での1軍キャンプに抜てきする考えを明かしており、高校通算37発のスラッガーは準備OKなようす。まずは1月上旬の新人合同自主トレでアピールを目指す。

「行けるなら(1軍キャンプへ)行きたい。焦らずできることをやって、自分のパフォーマンスを出していきたい」

5日に地元に別れを告げ、関西へ移動予定。港町で育った男が、力強く船出する。【中野椋】

○…前川は、元レスリング世界女王で五輪3連覇の吉田沙保里と同じ津市出身。同市の屋内スポーツ施設「サオリーナ」はその名前が由来になるなど「吉田沙保里の町」といえる。「会ったことはないですけど、テレビで見ていた。ああいった気持ちの強い選手になりたい」とレジェンドに続く活躍を誓った。吉田が受賞した国民栄誉賞に話が及ぶと「手の届かないものだと思っていたけど、自分で可能性をつくって、この先できることを全てやって、一生懸命野球に向かっていきたい」と思いをはせた。