ソフトバンク東浜巨投手(31)が、史上84人目、通算95度目となるノーヒットノーランを決めた。完全試合のロッテ佐々木朗に次ぐ今季2人目で、沖縄出身の選手では史上初。9回を97球で抑え、100球未満の完封「マダックス」も達成した。球団では19年の千賀以来3年ぶり3度目の無安打無得点。チームは7連勝を決め、東浜はハーラートップタイの4勝目を手にした。

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9回2死。東浜は体勢を崩しながら、西武金子の打球に左手を伸ばした。ボールはグラブに収まらない。二塁・三森に全てを託した。「いつもはヒットもエラーも気にしない。だけどあの時だけは『捕れよ!』って思ってしまいました」。無安打のまま、27個目のアウトを奪った。三森に抱きつかれ、クールな男が両手を上げて喜ぶ。「信じられない。僕としては、やっちゃった…って思いました」。声が弾んだ。

150キロ前後の直球に、代名詞シンカーが抜群にキレた。5回以降は右足をつりながら、続投を志願。「最後はちょっと怪しかったですけど、何とか出来てよかったです」。外野に飛んだ打球は3回の中飛だけ。足に不安を抱えながら、06年の中日山本昌以来となる100球未満でノーノーを達成した。普段から汗かきの右腕は「湿気も多くて暑かった。いつも以上に汗をかきました」。満面の笑みで上がったお立ち台。汗がライトで輝いた。

「正直に言うと、人のことに構っていられない」

今季は不退転の決意を持って臨んだ。17年に16勝で最多勝のタイトルを獲得。その後は2桁どころか1軍定着すらできなかった。「悔しさ、怒り、腹立たしさ。自分の全てと向き合う。自分と会話をする。それを力に変える」。オフはタマスタ筑後で孤独な自主トレ。「逃げ道は作らない」と午前6時に起き、午後9時には眠った。「ライバルは自分」と自分に言い続けた。「いいですよ。健康的でした」。そう話したときの晴れやかな表情は、この日の笑顔に重なる。

入団当初の理想は「10安打完封」。それ以上の快挙に「もしかしたらそっちの方がうれしいかも」と笑った。9回は観衆がスマートフォンを片手に、その瞬間を記憶と記録に残した。「1球1球、歓声や拍手、どよめきがあった。今まで経験したことのないような興奮、高揚感でした。これからも球場に足を運んで応援していただきたいです」。チームは7連勝で、自身はリーグトップタイの4勝目。東浜が偉業を成し遂げた。【只松憲】