阪神糸井嘉男外野手(41)が13日、今季限りでの現役引退を発表した。

日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)は同学年の元チームメートに「自分にないモノを持っているプレーヤー」と最大限の賛辞を贈り、現役生活19年間をねぎらった。【聞き手=佐井陽介】

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糸井選手とは同学年です。大学時代はなかなか知り合うきっかけがなかったこともあり、プロ入り後に初めてプレーを見た時、その身体能力の高さにえらく驚かされた記憶があります。

阪神と日本ハムは毎年2月のキャンプ序盤に練習試合を行うのですが、糸井選手は他の選手と比べて体のバネが違いました。走っている姿を見ても、投げている姿を見ても、能力の違いが明らかだったのです。「自分にないモノを持っているプレーヤー」。第一印象はそんな感じだったように思います。

まだ糸井選手が投手だった頃には、対戦してホームランを打ったこともあったそうです。ただ、糸井選手に対して自分が勝ったというイメージは全然残っていません。13年のWBCでは初めてチームメートになり、17年から19年までの3年間は阪神で一緒にプレー。間近で練習を見させてもらっても、やっぱり身体能力の面では負けを認めざるを得ませんでした。

打撃練習にしても飛距離が違う。キャッチボールにしてもボールの強さが違う。「自分もこれぐらいの能力があれば…」とうらやましくなり、同時に「自分は別の部分で勝負しないといけない」と気持ちを奮い立たせてくれる存在でした。

一方で、仲間になってからは意外な一面にも気付きました。糸井選手というと、「超人」と呼ばれているだけあって、常人と違って少しぶっ飛んでいるイメージもあるかもしれません。でも、実際に食事の席などで同じ時間を共有するようになると、印象はガラリと変わりました。

もしかしたら自分と糸井選手を比較した場合、自分の方がしっかりしていて、糸井選手の方が適当だと思われている方も多いかもしれません。でも、現実は逆な気もします。糸井選手は実はいつも周りが見えていて、すごく気を使うタイプ。だから、誰からも愛されるのではないでしょうか。

同学年の選手、しかも共に戦った仲間がユニホームを脱ぐのはいつだって寂しいものです。ただ、糸井選手に関しては、引退後の活動が個人的にすごく楽しみだったりもします。他のプロ野球選手にはない、特別なキャラクターの持ち主でもありますからね。

今は「お疲れさまでした」としか言えません。またゆっくり話ができる日を楽しみにしています。

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