代役1番が虎の窮地を救った! 阪神島田海吏外野手(27)が6年目のプロ1号を先頭打者弾で飾り、堅首に大貢献した。

右肋骨(ろっこつ)骨折で離脱した近本に代わり、今季初の1番中堅で出場。初回に森下から右翼に運び、試合開始数分で決勝弾を生み出した。熊本同郷の同学年で高校時代はライバルだった大竹のプロ初完封&7勝目をアシスト。チーム2年ぶりの球宴前勝ち越しターンも決め、2位DeNAとのゲーム差を2・5に拡大だ。

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島田が祈った。「切れないでくれ!」。願いは通じた。初回第1打席。打球は右翼ポールを直撃。一塁ベースを回り、右手を突き上げた。「走るスピードとかも分からなくて。打ったことがなかったので」。照れ笑いを隠しながらダイヤモンドを1周。ベンチではナインから一度スルーされる「サイレント・トリートメント」で祝福された。

今季初めてスタメン表の「1番中堅」に名前があった。不動だった1番近本が前日4日に「右肋骨(ろっこつ)骨折」で戦線離脱。プレッシャーがゼロなはずがない。「試合前に全部緊張しちゃうつもりで」。練習から心を追い込み、森下と対峙(たいじ)した。

作戦は成功した。初回、捉えたのは右腕の3球目の144キロ。プロ6年目、通算545打席目で初アーチが飛び出した。岡田監督も「初ホームランて知らんかったわ」と驚きの1発。プロ初アーチが先頭打者本塁打は球団3人目だが、決勝弾は長い猛虎史でも初めての快挙。代役の新1番が超激レア弾で苦境を救った。

ずっと胸に秘めてきたことがある。

「近本さんは目標でもあるけど、追い抜かないとセンターで出られない。自分もそういう存在になっていかないといけないって、ずっと思ってるから」

チームには痛手だが、これ以上ないチャンスが訪れた。「近本さんの代わりになるか分からないけど、僕は僕のやることをやりたい」。ヒーローインタビューで広島の虎党に誓った。

盟友大竹のプロ初完封をアシストした。同じ熊本出身で同い年。火の国コンビが投打の主役になり「ちょっと特別な気持ちはある」と実感を込めた。九州学院2年夏、熊本大会で済々黌の大竹と対戦したが0-1で完封負け。自身は1安打放ったが敗れた。かつてのライバルが、タテジマでチームメートになった。「あいつを投げやすくできたんじゃないかな」と会心だ。

指揮官は「近本がいてない分、昨日の時点で島田でいこうと。内容も悪くないし打順いじるのも嫌やからな」と今後も1番継続を示唆。島田は「いつも支えてくれてる妻に送りたいと思います」とホームラン球に感謝を込める。2位DeNAとは2ゲーム差に拡大。ニューヒーローが、虎の先頭を走る。【中野椋】

◆島田海吏(しまだ・かいり)1996年(平8)2月6日生まれ、熊本県出身。九州学院から上武大を経て、17年ドラフト4位で阪神入団。5年目の昨季は1軍で123試合に出場。漫画「天才バカボン」の「ウナギイヌ」に似ていることから、愛称は「うなぎ」。昨季は安打した選手が、塁上で腕をニョロニョロ動かす「うなぎポーズ」が流行。土用の丑(うし)の日には「ありがとうなぎ」とあしらわれたオリジナルグッズも発売された。176センチ、73キロ。右投げ左打ち。

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