絶体絶命のピンチで西武が“お家芸”に成功した。

延長11回、上田大河投手(24)がストライクが入らず2死満塁に。ただ、野球は18・44メートルだけでは完結しない。柘植世那捕手(29)もベンチの首脳陣も気付いた。「いいですか?」。西口監督は「いいよ」と了承。柘植のサインで、一塁走者の後ろにいたタイラー・ネビン内野手(29)が一塁に走る。上田が見事なターンで、その時点では無人の一塁へけん制。カバーのネビンがうまく捕り、タッチアウト。全てが決まった。

伝統のピックオフ。春季キャンプでも練習する。「去年も交流戦で成功して、今年も」と西口監督もしてやったりの表情だ。昨季は阪神戦でのピックオフで窮地を脱した。一瞬でもタイミングがずれたら終わり。目的はけん制アウト、ただ1つ。相手にばれるから頻繁には使えない。それでも指揮官は「成功するために使ったんで。ちゃんと投げてくれるもんだと思ってるからね」とバッテリーやネビンに全幅の信頼だ。

ネビンはビッグプレーの直前、遊撃や外野に何やら声をかけていた。「何も起きないかのように振る舞うこと。早すぎても遅すぎてもダメ。自分の気持ちもコントロールしながら」と秘けつを話す。アウト直後の絶叫とガッツポーズは今回も仲間やファンをたかぶらせた。ベンチでは岸や甲斐野が先頭で出迎えた。甲斐野が明かす。「(走者を出した浜屋に)大丈夫だよ、浜屋、大丈夫やで、って声かけてて」。練習があったから勝った。練習で皆が救われた。【金子真仁】