張本勲さんはTBS系の情報番組「サンデーモーニング」をとても大切にしていた。番組内では「喝(かつ)」「あっぱれ」を縦横無尽に行使していたが、野球中継の解説ではまず使わなかった。アナウンサーから「このプレーは喝でしょう」と振られても、「一生懸命にやってますから」とかわす。元番組スタッフが張本さんにその理由を聞くと「あれはサンモニのものだから」と答えたという。
打ち合わせでスタッフから「ここは喝はなしで」と言われると、本番では「喝」を入れた。ミスを犯した選手に体調不良などの事情があっても「表に出る以上はぶざまな姿を見せてはいけない」という強烈なプロ意識からだった。サッカー三浦知良(カズ)への「引退勧告」も「かっこいいカズのままでいて欲しい」という思いの裏返しだった。
好き嫌いが激しそうに見えて、共演者にNGは一切なかった。唯一、野村克也氏(故人)に対しては「ノムさんはだめだ。おもしろすぎる。俺が食われる」と周囲を笑わせたという。番組や中継スタッフとの食事会では、自ら年下の人間にお酒をつくり続けた。「ただ水割りでもお湯割りでもものすごく濃いんです。張本さんはお酒が強いので」(元スタッフ)。番組の新年会にも必ず参加。大所帯のスタッフ全員にお酒をつごうとするので、「今日だけは真ん中に座っていてください」と周囲がお願いするのが恒例だった。
21年いっぱいでレギュラー出演に区切りをつけ、その後は要所で顔を見せた。「後任」を気にしていたが、上原浩治氏については「オレにもカツを入れるところがいい。きっとおもしろくなるよ」と話していたという。「親分」大沢啓二氏(故人)とのコンビから始まった「喝」「あっぱれ」の文化は、張本さんが残した功績の一つでもあった。



