平成唯一の3冠王、ソフトバンク松中信彦内野手(39)が14日、1軍から“追放”された。交流戦優勝を決めた13日ヤクルト戦に代打で出場。この起用プロセスに不満を爆発させ、優勝セレモニーをボイコットした。激怒した秋山監督は出場選手登録を抹消し、無期限の2軍調整を命じた。松中は謝罪したものの、チームの勢いに水を差す事件となった。

 一夜明けても指揮官のはらわたは煮えくりかえっていた。交流戦V直後に球場を去った松中の行動は身勝手かと問われ、本気で怒った。「当たり前やろ。思い出させるな。気分悪くなる。いいことはしゃべりたいが、悪いことはしゃべりたくない」。いつも温厚な秋山監督の口から出た言葉が追放劇のすべてを語った。

 事件の発端はヤクルト戦の代打起用。5回までに6点リードとなり、松中によると1度は「今日(の代打)はない」と言われたが、急きょ8回に代打を告げられたという。結果は、3日の1軍復帰後5打席目で初安打となる中前打。この回ダメ押しの3得点の起点となった。ただ、この過程に我慢ができなかった。

 「1打席1打席、打てなかったら引退という思いで1軍に上がってきて、たとえ10点差でもどんな場面でもいく決意でいた。ないと言われていたので、準備せずにいくことになった。プロ17年間、しっかり準備する気持ちだけは欠かさなかった。そこは譲れない部分だったので、カッとしてしまいました。ペナルティーは覚悟していました」

 松中は生きざまを軽視されたと受けとめたようで、一時的に感情をコントロールできなくなった。チームマネジャーが優勝セレモニーに参加するよう説得したが、聞く耳を持たず。ボイコットという首脳陣から反逆的に映る行動をとった。声援を届けたファンに姿を見せることはなかった。

 秋山監督には前夜のうちに電話で謝罪。その時点で「ペナルティーだぞ」と2軍行きを告げられた。松中はこの日ヤフオクドームで荷物をまとめ、ホワイトボードにマジックで仲間へ謝罪文を残した。「水を差して申し訳ありません。また頑張ります。リーグ優勝に向けて頑張って下さいと書きました。機会を見て、みんなに直接謝りたい」。

 懲罰降格という厳格な措置をとったため、球団としての追加処分はないという。ただ、秋山監督は2軍調整について「知らん。決めてない」と無期限を考えており、先行きは真っ暗。今日15日から西戸崎合宿所でみそぎ払いの練習を始めるが、今季中に1軍復帰できる保証はない。ホークスで2000安打という夢も遠のく。身勝手な行動に擁護する声も少なかった。

 小久保が引退し、今ではチーム最年長の生え抜き。3冠王も獲得した打撃技術は球界の誰もが認めるところ。模範となるべき男が一時的な感情でとった行動は、代償が大きい。「たたかれるのは当然だと思う。練習をし続けます」。何とも後味の悪い優勝となってしまった。【押谷謙爾】