新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、史上初の無観客開催となった春場所が幕を閉じた。発熱による休場者は平幕の千代丸ら3人出たが感染者は出ず、土俵周りでも大きなトラブルはなかった。「無観客開催運営プロジェクトチーム」のリーダーを務めた芝田山広報部長(元横綱大乃国)は、「他のスポーツ界にも勇気を持ってもらえると思う」と胸を張った。

同チームは、広報部の高崎親方(元前頭金開山)が発案。場所中に毎日、広報部や審判部、行司や呼び出しなど、各担当部署の代表者ら約25人が集まった。前日の反省や今後の対応についてなど、約1時間の会議が連日行われ、会議内容や決定事項などは代表者が担当部署や所属部屋に伝達。芝田山広報部長は「どんなささいなことも話し合い、みなさんに情報が回るように徹底した」と話した。

感染者を出さないための努力も当然あった。会場入りする親方衆の専用入り口を作ったり、世話人が会場内に明け荷を運ぶ際の動線も場所前に何度もシミュレーションした。力士らが行き帰りで使用するタクシーの待機場所や方向にもこだわるなど、密集による接触や混乱を回避するあらゆる方法を考え抜いた。

芝田山広報部長は「無の境地でやった。プロジェクトチームだけではなく全協会員が一丸となった結果」と15日間を振り返った。スポーツイベントの中止や延期が国内外で相次ぐ中、15日間やり切ったことには大きな意味がある。【大相撲取材班】

受けた賜杯を見つめる白鵬(撮影・外山鉄司)
受けた賜杯を見つめる白鵬(撮影・外山鉄司)