WBC世界バンタム級2位の那須川天心(27=帝拳)が強敵レジェンドとの再起戦に勝利し、世界挑戦権をつかんだ。元2階級制覇王者で同級1位のフアンフランシスコ・エストラダ(35=メキシコ)との同級挑戦者決定戦に臨み、9回TKO勝ちを収めた。フライ級、スーパーフライ級で王座を統一してきたプロ50戦目の世界的なビッグネームを撃破した。
リング上のインタビューでは冒頭で言葉がでなかったが「いやー、泣いてないよ、泣いてないって。みなさん本当にありがとうございました。いやー、勝つってこんなうれしいんですね」と話した。
昨年11月、井上拓真(大橋)とのWBC世界バンタム級王座決定戦で判定負けし、キックボクシング時代を通じてキャリア初の黒星を味わった。那須川自ら「復帰戦でやる相手ではないとみなさんに言われます」と口にするほど、危険度の高い対戦相手だった。WBCからの指令だったものの、「崖っぷち」という状態で迎えた再起戦の相手としてはハイリスクだった。それでも那須川は「持っているものをすべてぶつけてKOしたいなと。必ず勝つ」と貪欲な姿勢で再起のリングに立っていた。
ボクシング転向8戦目での世界初挑戦で敗れた那須川は「何かボーッとしたり、自分のことが信じられなくなったり(精神面で)たくさんあった。自分自身を変えるために、今回ここまでしっかり挑んできたつもり。もう自分に負けたくない。腹はくくっている。裸一貫、やるだけ」と覚悟を決めて約5カ月ぶりの大きな舞台を踏んだ。
キック時代の15歳からパンチ技術を学んだ元帝拳ジムトレーナーで現GLOVESジムの葛西裕一会長(56)と昨年末からコンビを組んだ。また毎週のように古巣でTEPPENジム会長の父弘幸氏(56)のもとで練習するなど原点回帰というべき、トレーニングを加えた。那須川は「今回の練習が1番きつかった。(前回までとは)イメージが変わると思う。変わらなきゃ意味ないですから」と手応えを胸にエストラダと対峙(たいじ)していた。
世界的な強豪に勝って挑戦権を得たことで5月2日、東京ドームで行われるWBC世界同級タイトル戦となる王者井上拓真(30=大橋)-同級4位井岡一翔(37=志成)戦の勝者に挑む予定だ。「本当にたくさん崖の上から落とされ、そこから這い上がってこいよと。そういうメッセージがたくさん、いろいろな方からきました。そこをしっかりと登ってきたなというのはある」。元世界2階級制覇王者のレジェンドを下し、再びボクサー那須川が輝きを増した。
<ラウンドVTR>
1回 那須川が開始から積極的にパンチを放つ。落ち着いて距離を作り、右のジャブからペースを握ろうとする。那須川の左のボディーでエストラダがバランスを崩す場面も。エストラダは最後までガードを固めて様子見る。日刊採点は那須川の10―9。
2回 那須川が積極的に攻撃するが、エストラダの右ストレートが決まる。 那須川も踏み込んで左ボディーを当てる。那須川がプレッシャーをかける展開。後半にもカウンターを入れ、エストラダの顔面が赤くなる。日刊採点は那須川の10―9。
3回 開始からエストラダが距離を詰める。那須川のボディーが決まる。エストラダもカウンターで顔面に左を当てる。互いに堅いガードを披露。一進一退の攻防となったが、那須川が手数で上回った。日刊採点は那須川の10―9
4回 那須川の打ち終わりに、エストラダがカウンターの右を入れる。エストラダが下腹部に打撃を受けて一時中断。残り1分に那須川の左のカウンターが決まり、エストラダが後退。ペースを渡さなかった。日刊採点は那須川の10―9
5回 4回を終えて公開ジャッジは那須川の39―37が1者、38-38のドローが2者。那須川が積極的にパンチを繰り出す。エストラダを中央に那須川が回るが、終盤は接近戦になる。エストラダの右が那須川の顔面を捉える。日刊採点は那須川の9-10。
6回 序盤は那須川の間合いで展開。エストラダがパンチで踏み込んだところで、偶然のバッティングでエストラダがマットに倒れた。再開後はエストラダが体力回復を図るが、那須川がプレッシャーをかけてボディーを放つ。ロープ際に追い込む場面も。日刊採点は那須川の10―9
7回 那須川の左ボディーをエストラダが嫌って後退。那須川が右のジャブで距離感を保つ。スピードのあるパンチも決まり始める。フェイントから右アッパーを決める。終盤にはカウンターの左ストレートもエストラダの顔面を捉えた。日刊採点は那須川の10―9
8回 セコンドから「バックスってもなくていい、いこう」という声が上がる中、那須川が距離を詰めてパンチを繰り出す。ガードの上から強引に。那須川は右のジャブを効果的に使う。那須川のショートが決まる。日刊採点は那須川の10-9
9回 8回までの公開採点で3者が那須川を支持。この回も那須川が重圧をかけ、エストラダは後退。足を動かし、多彩な攻撃で手数を増やす。追いかけてパンチを繰り出す場面も。終盤にはエストラダがふらつくようなシーンもあった。日刊採点は那須川の10-9。
10回開始前に、エストラダ陣営が棄権。9回TKO勝ち
◆世界バンタム級戦線 WBA正規王者堤聖也(角海老宝石)は昨年12月のノニト・ドネア(米国)戦で痛めた鼻骨が回復しておらず次戦未定。同休養王者アントニオ・バルガス(米国)はビッグマッチに向けて交渉中。WBC王者井上拓真(大橋)は5月2日、東京ドームで同級4位の元4階級制覇王者井岡一翔(志成)との初防衛戦が決定。WBO王者クリスチャン・メディナ(メキシコ)は今年2月に母国で初防衛に成功。IBF王者ホセ・サラス・レイジェス(メキシコ)は昨年12月に王座決定戦を制し、新王者となった。
◆那須川天心(なすかわ・てんしん)1998年(平10)8月18日、千葉・松戸市生まれ。5歳で空手を始め、小5でジュニア世界大会優勝し、キックボクシングに転向。14年7月、15歳でプロデビュー。15年5月にプロ6戦目で史上最年少16歳でRISEバンタム級王座を獲得。16年からRIZINにも参戦。18年6月、初代RISE世界フェザー級王者に。22年6月、K-1の元3階級制覇王者・武尊を判定で撃破。23年4月に6回判定勝ちでボクシングデビュー。24年10月にWBOアジア・パシフィック・バンタム級王座獲得。身長165センチの左ボクサーファイター。

