51歳になったウィル・スミスが23歳の「自分」と対決する。彼が演じる伝説的スナイパーが、自分のクローンとの戦いを余儀なくされるSF作品だ。

開幕は疾走する列車に乗る標的を長距離狙撃で仕留めるシーン。アン・リー監督は、毎秒60枚の3D画像を重ねた「3D+」の新技術をいきなり全開で繰り出す。その場に立ったような映像の奥行き、臨場感に胸がざわざわする。

クローンの登場にさらに驚かされる。「インデペンデンス・デイ」(28歳)の頃よりさらに若い「もう1人のスミス」だ。「ライオン・キング」同様に一から作り上げた文字通りの映像クローンなので、特殊メークのような若作り感はない。経験VS若さ。スナイパー同士のすさまじい戦いの滑らかな動きにただただ見入ってしまう。

「ブロークバック・マウンテン」で知られるリー監督らしく、こちらも特殊技術でスミスが表情と声色を吹き込んだ23歳は、育った背景の違いまで微妙に映し、ドラマ部分も魅了する。

新技術のお披露目感を超え、主人公とクローンが長い断絶を経て再会した実の親子のように見えてくるところがこの作品のミソだ。

【相原斎】 (このコラムの更新は毎週日曜日です)