香港の離島、長洲(チョンジャウ)は本島の南西、船で30分のところにある。

過密なエネルギーに満ちた本島とは違い、時はゆったりと流れている。海を見晴らす日泰食堂には人々が集い、ビール片手に麻雀やトランプに興じている。香港社会の近年の激動やコロナ禍はこの小さな食堂にも少なからず波風を立てるが、それでも、うらやましいようなご近所付き合いに揺るぎはなく、日々の営みは続いていく。

若い常連客のフェイメイは、中国返還以来の圧政を快く思っていない。保守的なオーナー、ジョンさんとはしばしば口論になるが、タメ口の友好関係に変わりはない。コロナ禍で客足が遠のいても、この店には不思議に悲壮感がない。

海を挟んで時代の激動をソフトフォーカスで見る離島の生活は、許容の精神と何でもない日常のありがたさを改めて教えてくれる。

故郷の島で初の長編ドキュメンタリーを撮ったフランキー・シン監督は、オンラインで取材した時に「5年間カメラを回して、使ったのは1%くらいですかね」とさりげなく言った。もったいない。できることならずっと見ていたい。そんな癒やしに満ちた作品だ。【相原斎】

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