サッカーW杯の北中米大会は、メッシ(アルゼンチン)C・ロナウド(ポルトガル)エムバペ(フランス)ハーランド(ノルウェー)らスター選手の活躍で、世界を熱狂させている。

そんな大会をサイドから盛り上げているのが、テーマソングだ。

FIFA(国際サッカー連盟)の公式テーマソングは「Dai Dai」(ダイ・ダイ)。

世界的な女性ポップスター、シャキーラ(49)と、アフリカン・ミュージックのカリスマ、バーナ・ボーイ(34)が歌っている。

「Dai」はイタリア語のスラングで「さあ!行こう」「頑張れ!」の意味である。

日本では、テレビ各局がW杯関連の番組でテーマソングを流している。

歴史的にNHKのテーマソングが抜群にいい。

今回は米津玄師(35)の「烏」(からす)が、「2026 NHKサッカーテーマ」になっている。

「今だけは誰の声も聞こえない場所へ行こう」というサビの部分が、W杯番組の冒頭で流れると、言い知れぬ高揚感を感じる。

「烏」のタイトルは、サッカー日本代表のエンブレム「八咫烏(やたがらす)」を思い起こさせる。

かつて日本代表のユニホームには日の丸がつけらていた。1989年(平元)から、八咫烏をモチーフにしたデザインのエンブレムがつけられるようになった。

八咫烏は、日本の神話に登場する「3本足のカラス」のこと。「八咫(やた)」とは、とても大きなという意味だ。

「古事記」や「日本書紀」に記される神武天皇の東征(九州の日向から奈良に攻め入り、日本を建国した神話)の際、八咫烏が現れ、正しい道を案内したとされている。

そこから「導き」「勝利」を象徴する存在として、信仰対象となった。

日本代表のエンブレムの八咫烏は、5つの羽根と3つの尾羽が描かれている。

5つの羽根はスピード感と、日本サッカー協会の5つのバリューを表す。

バリューとはサッカー関係者が大切にすべき価値観のことで、「エンジョイ」「プレーヤーズファースト」「フェア」「チャレンジ」「リスペクト」だ。

3つの尾羽は、「普及」「強化」「国際貢献」のビジョンを表している。

米津は楽曲について「サッカーという大きな構造の中で、前を見据え屹立(きつりつ)し続ける人々が、集団であると同時に健やかなる個人であってほしいという願いを元にこの曲を作りました」とコメントしている。

サッカーだけでなく、組織スポーツは「勝利」を追求する。そのためには選手間の「競争」もある。それは社会にも言える。

当然のことではあるのだが、組織の中にいても、個人としては子供のころのように、純粋に楽しむ心を持ち続けてほしい。

米津の「烏」には、そんな思いが込められているような気がする。

今だけは、烏になって、子供のころに戻ろうと。【笹森文彦】