日本テレビ連続ドラマ「高嶺の花」(水曜午後10時)で、美女と野獣カップル(石原さとみ、峯田和伸)の飲み友達役で出演している俳優袴田吉彦さんのせりふです。

 昨年“アパ不倫”による離婚で針のむしろのダメージを負ったかと思いきや、バラエティー番組での捨て身のネタ化戦略で逆に好感度を上げ、4月期には3本のドラマ出演であっという間に俳優業に帰還した袴田さん。今回ついに本業のドラマでも浮気キャラ、離婚キャラ役を解禁しました。脚本野島伸司さんの遊び心のようなシーンでしたが、実話コントの一線を越えない役としての存在感があって、今まであまり考えたことがなかった袴田吉彦の俳優力というものを再認識しました。

 冒頭のせりふは、石原さとみ、峯田和伸を含めた商店街の仲間がいつもの店に集う中、「実は2年前に離婚された」ダメ夫であることが判明する場面でした。

 浮気をほじくり返され、「離婚したけど、愛する娘もいるんだし」と、自らと重なるせりふを言わされ、袴田さんには試練のシーン。元奥さん役の苗木優子から「一緒に暮らすうちにデリカシーや妻への思いやりがなくなってくるのよ」とガミガミ言われ、石原さとみからも「夫婦の仲がダメになる時のきっかけってあるの?」とぐいぐい。「まあ、夫婦によってパターンがね」という防戦一方な表情に鮮度と人間味があり、最後は全員から「頑張れ」と励まされるカオスなサイドストーリーでした。

 なんだか公開反省会のような雰囲気でしたが、作品の中では峯田和伸サイドの商店街人脈としてあたたかい空気感をにじませていて、友人キャラのせりふとして自然なんですよね。「どこまでが浮気かにもよるけどな」。お前が言うなというツッコミが来そうなせりふも、主人公カップルの今後に一石を投じる余韻があって、役柄のせりふとしてすっと頭に入ってきました。

 昨年9月のアパ離婚から4カ月後、大みそかの日本テレビ「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」でまさかの「変態仮面」コスプレに挑み、「不倫仮面、袴田!」と参上した時は、こんな角度でのみそぎの方法があったかと目からうろこ。よくやったと人気を上げ、再ブレークを果たしました。

 ネタとして消費されるだけで終わらず、きちんと本業につなげて結果を出しているのは、この人の実力ですよね。もともと主人公周辺の重要な役どころで欠かせない俳優。3月のネット配信ドラマ「配信ボーイ」では修理工の働き者父ちゃん役が魅力的でしたし、4月期は3つのドラマに出演。日本テレビ「Missデビル」では屈折したパワハラエリート役、フジテレビ月9「コンフィデンスマンJP」では、トリックの重要な小道具となるDVD「名探偵 海老河原の冒険」の名探偵役、BSプレミアム「鳴門秘帖」ではストーカー体質の剣豪役と、全方向の演技力を発揮しています。

 ネット上も、袴田が登場すると「アパきたー」「アパ不倫のひとー」「袴田さん出てて笑」とすっかり愛されキャラ。「やっぱりこの人うまい」「いい味出す」などの評価が続きます。実力あってこその結果オーライなわけで、いろいろ感銘を受けます。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)