第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が3日、決定し監督賞には白石和弥監督(43)が選ばれた。

白石監督は「昨年もノミネートされたけれど、今年は他に大きな作品がある中で選ばれてびっくりしています」と喜んだ。

「狐狼の血」は、ヤクザの抗争と組織に食い込む刑事の姿を鮮烈に描いた。

「難易度の高い仕事と思ったが、やってみると、面白かった。映画ファンの『こういう映画を待っていた』という声がうれしかった。公開後、いろいろな役者さんに『出たかった。ヤクザ役で』と言われた」。

えぐいシーンも多く、中でも原作にない「養豚場」シーンが強烈だった。

「食う側がオオカミなら、食べられる側で豚を使いたかった。最初は大変だったけど、心が通って、いつも夜7時に寝るのに、深夜の撮影では豚も起きてきて、『ここにいてね』と言うと、ちゃんといてくれた」。

監督作品は30代で2本だけだったが、今年は3本公開された。来年も2本公開され、何本か撮る予定。

「最初は監督で食っていけるか不安だった。これまでは新人のつもりだったが、これからは第2幕の中堅。でも、映画を撮る楽しさ、見てもらえる喜びに変わりはありません」。【林尚之】

◆白石和弥(しらいし・かずや)1974年(昭49)12月17日、北海道旭川生まれ。若松プロに入り、若松孝二監督に師事。10年、映画「ロストパラダイス・イン・トーキョー」で監督デビュー。13年「凶悪」、17年「彼女がその名を知らない鳥たち」でブルーリボン賞監督賞。

◆サニー/32 中学教師の藤井赤理(北原里英)は、24歳の誕生日に誘拐される。誘拐犯の柏原(ピエール瀧)小田(リリー・フランキー)は「犯罪史上最もかわいい殺人犯」と神格化されるサニーの信奉者で、赤理をサニーと呼ぶ。

◆孤狼の血 昭和が終わる直前の広島を舞台に、警察とヤクザの攻防を描いた。ベテラン刑事の大上(役所広司)は、ヤクザをなだめすかして、ある男の失踪事件を追い、新人刑事の日岡(松坂桃李)は反発しながらもついていく。

◆止められるか、俺たちを 69年、吉積めぐみ(門脇麦)は、若松孝二監督(井浦新)が若者たちを熱狂させる映画を作る若松プロダクションの門をたたいた。めぐみは、映画作りの現場に魅了されるが、不安や焦りも感じ始める。

◆監督賞・選考経過 「孤狼の血」などの白石和弥監督が、瀬々敬久監督との決選投票を制した。「松坂桃李君の舞台を見て起用した」(伊藤さとり氏)と、キャスティング能力の高さを評価。「若い監督で期待が持てる」(秋山登氏)と将来性の高さを挙げる声もあった。