先週末、横浜みなとみらいで「フランス映画祭」が開催された。今年で27回目。すっかり恒例行事となっており、今回も「男と女」(66年)のクロード・ルルーシュ監督(81)が団長を務め、そうそうたる顔ぶれが来日した。

オープニングでは女優の中谷美紀(43)が「悩み多き10代の頃、いらだちやあふれる探求心を満たしてくれたのがフランス映画でした」とあいさつした。

ハリウッドの物量に圧倒されながら、仏映画界がぴりりと心に響く小品を生み出し続けてきたことは確かだ。記者の思春期には、ハリウッドよりむしろ仏映画の方が元気だった記憶がある。

昨年の団長を務めたアラン・ドロン(83)が洋画専門誌の表紙を飾り、三船敏郎と共演した「レッド・サン」(71年)に心躍った。ルルーシュ監督の「白い恋人たち」(68年)には祭りの後の寂しさを教えられた覚えがある。

今年はオープニングの日に、上映作品の1本である「アマンダと僕」(日本公開中)のミカエル・アース監督(44)をインタビューするため、一行が泊まるインターコンチネンタル・ホテルを訪ねた。横浜のランドマークとなっているこのホテルで「フランス代表団」が借り切った1フロアは何ともにぎやかだった。

みなとみらいの「近未来的街並み」に飽きたらず、前夜は若手を中心に東京に繰り出していたとのことで、個別のインタビュー時間はずるずると繰り下げになっていた。時間に正確な日本の記者たちはそれぞれ取材対象の部屋の前で順番待ち。日本人スタッフが時間調整のために走り回る一方で、部屋の中からは熱弁を振るう声や笑いが漏れ聞こえて、良くもあしくもフロアは活気にあふれていた。

型破りで元気のいい最近の仏映画を象徴する光景と言っていいのかもしれない。今回の上映作品を並べただけでもバラエティーに富んでいる。

中年のダメ男たちがなんとシンクロナイズドスイミングに挑戦する「シンク・オア・スイム」(日本公開7月12日)、マカロニならぬフレンチ・ウエスタン「ゴールデン・リバー」(同7月5日)、テロの悲劇と再生を描く「アマンダと僕」、ベル・エポックの時代のパリを舞台にしたユニークなアニメ「ディリリとパリの時間旅行」(同8月24日)もお薦めだ。

仏映画には今も昔も大なり小なり想像を超えた「開けてびっくり」の驚きがある。【相原斎】