「パンケーキ」本当は嫌い…高学歴芸人・夢屋まさる

「パンケーキ食べたい!」のリズムネタで知られるお笑い芸人、夢屋まさる(21)がこのほど、日刊スポーツの取材に応じ、ブレークした19年を振り返った。慶大経済学部在学中でもある夢屋は先月25日に初エッセー「パンケーキ食べたいの人です。本当はもなか食べたい。」(宝島社)を出版。スティーブ・ジョブズのコメントを引用したり、過去にいじめを受けた経験も告白するなど、ネタとはギャップのある、知的で陰キャラの一面も告白している。20年の目標を「単独ライブやりたい!」とあげ、脱“一発屋”宣言した。

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夢屋は元日放送の日本テレビ系「ぐるナイおもしろ荘 若手にチャンスを頂戴!今年も誰か売れてSP」で、パンケーキネタを披露。SNSなどで話題になり一気にブレークした。「1月、2月、3月は何も考えずに進んでしまった感じ。毎日何かしらお仕事がある状態で、次のことが全く考えられなくて。ネタを考えるとか、今後どうしようとか考えるヒマもなく過ぎてしまった。あまり記憶がないんですよね。落ち着いたのはゴールデンウイーク明け、ホッと息をついたというか」。

もともとはコントを中心にネタを作っていた。「(記事に)掲載できないような、危なっかしいもの、ジャンル的に言うと宗教政治みたいなことをやってました。やりたいネタがそっちだった」。当然、露出は少なめに。一念発起した。「そういうネタをやっても、一向にテレビに出られない(笑い)。それで(パンケーキを)思いついたというより作ったという感じですかね。明るいやつをやろう、と。全く知られなかった人が少しは知ってもらえるようになって、『パンケーキの人』というイメージが付いた。友達の対応も少し変わりましたし。会社からもチヤホヤされるようになりました。ここ最近はないんですけど(笑い)」。

ただ、ブレーク中も自問自答の日々だったという「今年1月から5月までは、世間が思う『夢ちゃん』『パンケーキ食べたい』の人しかできなかったんです。充実した生活だったかもしれないんですけど、自分はあまり満足はしてなかったんです」。

ゴールデンウイーク過ぎに仕事が落ち着いたことで、考える時間ができた。「6、7月くらいから雑誌のモデルやファッションショーという他の仕事もやらせてもらえるようになった」。本を執筆するオファーもそのころだ。「お話を頂いたのが8月入ったくらいで、書いた時間で言うと2カ月くらい。文章を書くのは初めてでした」。

初エッセーについては「2カ月でやるもんじゃないですよね(笑い)。1年くらいはかけたかったですけど締め切りに追い詰められて」と自虐する。ただ中身は、孤立した中学時代やSNSでのいじめなど、シリアスなテーマも盛り込んだ、21歳らしからぬ本格エッセーだ。「テレビに出ている夢屋まさるは、自分の中でひとつスイッチを入れた、ある別人格だと思っているんです。逆に言えば、本に書いた内容が素なので。世の中の人はよく、クラスのカーストで陽キャラとか陰キャラとか言うじゃないですか。自分はまわりからは陽だと思われると思うけど、全然そんなことなくて。(漫画雑誌)ガロが好きだったり、浮き世離れしたものを好んできたので、そういうものを発信できたのは良かったと思ってます」。

小説にも挑戦した。アニメ「タッチ」をオマージュしつつ、少しシュールな内容も含む。「小さいころから本を読むのが好きで。尾崎紅葉さんの『金色夜叉』とか、夢野久作先生だったり。明治後期から昭和初期にかけての文豪の作品がすごく好き。二葉亭四迷先生の『浮雲』とかも読みました。本の内容というよりタッチというか、文章の作り、奇麗が好きで。文豪と言われる人たちは皆さん奇麗な書き方で、表現力はすごく高いので、そこに引かれて読むようになりました」。

アップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏の言葉を引用して、「人生観」が似ていることを盛り込んだり、セクシャリティーについても言及するなど、表裏含めて今の夢屋を書き尽くした1冊。書き終えて一定の達成感を感じている様子だ。「エッセーはもう、死ぬ前くらいでいいかな。本はすごい好きなので、今度はもっと長い小説だったり書ければと思っています」。

慶大の付属中高から慶大に進学し、現在は経済学部3年でゼミにも所属している。「1、2年でマクロミクロ、統計学、エクセル使って偏差値を出す作業…、そういうモノはしっかりやってます。今は、お笑い芸人としてではなく個人的に、株やFXに興味があるので、副業として稼げたらな、と思ってます。お金は大事なので、資産運用していかないと(笑い)」。

ただ本業はあくまでも、お笑い芸人。悩みに向き合いながら将来像を描いている。「今年一年で感じたのは、売れてない時の悩みと、ちょっとテレビに出させてもらった時の悩みというのはだいぶ違うんだなと思いました。昔は『あのオーディション失敗したな』だったのが、今は『あのテレビのあそこ失敗したな』になったんです。そういう意味では環境は変わりました」。

現在の自分の立ち位置を見る目も冷静だ。「皆さんの反響を頂いて、ただ、個人的には、たぶん1年は駆け抜けられないだろうなと思っていたんです。2019年の12月31日には、まあおそらく、この格好はしてないだろうな、7、8月くらいには(賞味期限が)死ぬんだろうな、と思っていました。なんとか1年、寿命が持ったので、20年は、芸人になった目標、単独ライブをやりたいというのがあるので、リズムネタではなく新たなネタを1人の時間で書いてやりたいな、というのはありますね。ブラックだらけなんでしょうね、おそらく(笑い)」。

ただ、「パンケーキ」を封印するつもりはない。「このネタはこのネタで。大嫌いなんですけど(笑い)。作った後、やりたくなさ過ぎて過呼吸を起こしてたくらいなんですけど(笑い)。ただ自分を救ってくれた、大事なネタ。このネタはこのネタとして、20年後、ヒザとかに痛みが出だした時、どんな感じになっているのか、というのも個人的にも楽しみ。面白いじゃないんですか、40歳のおじさんが、この格好して『パンケーキ食べたい』って言っているの。記憶に残るものを残せたのは良かったのかな、と思います」。

脱一発屋、お笑い芸人としての進化も目指しつつ、パンケーキ芸人も続ける。そんな夢屋だが、取材も終わりのころ、こうボヤいた。「本当は、炭水化物あまり食べないんですよ」。

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◆夢屋まさる 1998年4月2日、東京生まれ。幼少時には子役として電力会社などのCMに出演。慶応義塾高校時代にお笑いライブに出演し、スカウトされる。今年はモデルデビューも果たし「東京ガールズコレクション」などに出演。ジェンダーレスなファッションなども話題。恋愛については「興味がないというか、優先順位的にかなり下にある。合コンも1回も行ったことないです」。家族は両親。所属事務所先輩のコンビ、メイプル超合金と仲がいい。漢字検定2級、英検準2級取得。身長175センチ。血液型A。

その他の写真

  • 初エッセーを手にする夢屋まさる(撮影・小沢裕)
  • 初エッセーをPRするお笑い芸人の夢屋まさる(撮影・小沢裕)